【キモはユーザー第一志向のリストラ】ホンダ、日産、三菱の経営統合でどうなる10年先の自動車産業界

公開 : 2024.12.24 12:20

12月23日の午後5時、ホンダ、日産、三菱が都内で実施した共同会見には、200人近い報道関係者が詰めかけました。その中のひとりである桃田健史が、会見の印象、経営統合の影響などをレポートします。

重要性を感じたのは、経営統合に至る日程

12月23日の午後5時、ホンダ日産三菱が都内で実施した共同会見には、200人近い報道関係者が詰めかけた。

だが、冒頭のプレゼンテーションでは、ホンダと日産が3月と8月に示した、さまざまな技術領域での協業連携に関する説明とダブる内容であり、特に変わった発表はなかった。その中で、報道陣が特に重要性を感じたのは、経営統合に至る日程だった。

12月23日の午後5時、ホンダ、日産、三菱が都内で実施した共同会見。
12月23日の午後5時、ホンダ、日産、三菱が都内で実施した共同会見。    日産自動車

また、報道陣の多くが期待していた、台湾の鴻海(ホンハイ)の関与についても、日産の内田誠社長は「(ホンハイから)アプローチはない」と全面否定し、またホンダの三部敏宏社長は「報道で初めて知った」というに止めた。会見の後半になると、質問したいと手を挙げる記者の数が減り、会場内が「今日はこれ以上、話を深堀りできそうにない」といった空気感となった。

周知のとおり、今回の会見に至る1週間ほど前から、各種メディアではホンダ・日産の経営統合に関するリーク記事が横行した。その中では「鴻海がルノー所有の日産株を買い取り、日産買収に動く」とか「海外資本による日産買収を、日本政府が阻止しようとしている」と実しやかに綴られていた。

こうした各種報道をフックに、報道各社は独自取材を進めたようで、最終的な確認のために今回の会見でホンダと日産の社長に直接、その真偽を問うたが、そうした話自体を「知らない」と一蹴された形だ。

ここまで話題に上った鴻海としては、日産への関与の真偽について今後、なんらかのコメントを出すのかもしれない。

どうなる『5年から10年先』の自動車産業界

今回の会見の中で、ホンダの三部社長は「5年〜10年先になって、(市場全体が3社の経営統合の)重要性を分かってくれるはず」という主旨の発言をしている。『100年に一度の自動車産業変革期』と言われて久しいが、既存の自動車産業構造では、ホンダも日産も、そして三菱も生き残れないという危機感の現れだ。

だからこそ、真の意味での『リストラ』が必要なのだ。

経営統合後に想定されるシナジー効果としてこちらの7つを挙げている。
経営統合後に想定されるシナジー効果としてこちらの7つを挙げている。

今回、『本経営統合により想定されるシナジー効果』として、車両プラットフォームの共通化や、研究開発機能の統合、生産体制、拠点の最適化といった、7つの領域を挙げているが、これぞまさに構造改革、または事業の再構築としての『リストラクチャリング』である。

日本では1960年代の高度経済成長期を大きなきっかけとし、自動車メーカーは大量生産、大量消費型の巨大企業の道を突き進んできた。日本国内での需要に一定の目処がついた1980年代になると、稼げるアメリカ市場を強化し、さらに2000年代以降はBRICsと呼ばれる経済新興国での事業を拡大した。

なかでも中国は、政府主導型の経済政策効果もあり、あっという間に世界第一位の自動車製造、販売国に登りつめた。その時点で、ホンダも日産も、本来は次世代に向けた自社のリストラクチャリングを本気で行うべきだったのではないだろうか。そのツケがいま、ホンダと日産にまわっていているように感じる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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