【キモはユーザー第一志向のリストラ】ホンダ、日産、三菱の経営統合でどうなる10年先の自動車産業界

公開 : 2024.12.24 12:20

目指すべきは『ユーザー第一』志向の『リストラ』

今回の会見は、あくまでも『経営統合に向けた協議を始める』ことの発表だ。示された『経営統合により想定される7つのシナジー効果』は、あくまでの理論上の結果論に過ぎない。重要なのは『各方面との折衝、交渉』である。

各方面とは、両社の従業員、労働組合、サプライヤー、販売企業など、ホンダ日産、そして三菱と直接関わる多くの人たちであり、彼らすべてに経営統合後の状況を納得してもらうためのハードルは極めて高いと言わざるを得ない。なぜならば、前述のように広義における『リストラクチャリング』なのだから。

経営統合した後のユーザーとの向き合い方について、『血の通った言葉』が聞こえてこなかった印象。
経営統合した後のユーザーとの向き合い方について、『血の通った言葉』が聞こえてこなかった印象。    日産自動車

こうして、3社による『経営統合の協議を始める』との発表を俯瞰してみて、強く感じるのは『ユーザー不在』という点だ。

ホンダからも日産からも、これまで通りにブランドは維持するというものの、経営統合した後のユーザーとの向き合い方について、『血の通った言葉』が聞こえてこなかった印象がある。

テスラBYDなどの新興勢力の台頭や、米中の巨大IT企業のクルマを巻き込んだデータ連携サービスへの参入など、日本を取り巻く産業構造全体での『リストラクチャリング』が進む中だからこそ、日本メーカー各社は『ユーザー第一』を明確にした自社の『リストラクチャリング』が必須であるはずだ。

『クルマからモビリティへ』というお題目を唱えるだけではなく、真の社会変革を目指すための本気の『リストラクチャリング』が今、ホンダ、日産、三菱の3社連合に求められている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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