ポルシェ911 GT3 RSはどのようにして「1トン」のダウンフォースを生むのか 究極のマンタイキット

公開 : 2024.12.25 06:05

ポルシェとマンタイが共同開発した911 GT3 RS用のエアロキットは、285km/h走行時で1トンものダウンフォースを生み出す。エアロデバイスの概要と、追加荷重に耐えうるシャシー性能について紹介する。

強力なエアロとシャシー性能

長年にわたり、モンスターのような巨大なホエールテール・ウィングを備えた高性能なクルマがいくつも登場してきた。

それらが発揮する圧力は必ずしも驚異的というわけではないが、正のダウンフォースを生み出すというよりも、揚力を中和することを目的としている場合が多かった。

マンタイキットを装着したポルシェ911 GT3 RS
マンタイキットを装着したポルシェ911 GT3 RS

しかし今日では、ハイエンドスポーツカーはかつてないほど高速化しており、それに伴い、空力ダウンフォースの潜在的可能性も高まっている。

例えば、ポルシェは最近、現行の911 GT3 RS用のマンタイキットを発表した。ヴァイザッハのポルシェ開発センターとマンタイによる共同開発で、サーキット走行を目的としており、その性能は単なるモータースポーツへのオマージュを超えている。

このGT3 RSは、時速285kmで1トンものダウンフォースを生み出す。そして、クロサイの体重に相当する負荷に耐えるシャシーも素晴らしい。では、その性能はどのようにして実現されているのだろうか?

まず、リアから見ていくと、カーボンファイバー製ウィングに大型のエンドプレートを備え、ディフューザーはワイドで、カーボンファイバー製のフィンも長くなっている。

ディフューザーはクルマの下の空気を加速させて圧力を下げ、クルマを路面に引き下げる。高速で走行する際には、これが大きな違いを生む。

リアウィンドウはシャークフィン付きのカーボンパネルに置き換えられ、25kgの軽量化を実現。このフィンは、ポルシェの人気レーシングカー、963 LMDhのフィンを模したもので、高速時のコーナリング安定性を向上させる効果がある。

また、6つのルーフフィンと連動して、ラジエーターから排出される熱気をエンジンの吸気エリアから遠ざける。

リアの大幅な変更も重要だが、パッケージ全体として機能させるためにはフロントもそれに合わせた改良が必要だ。

フロントスポイラーの形状はダウンフォースを増大させるように再設計され、カーボンファイバー製の追加補強材がそれを支える。

その他、フェンダーフラップの再設計や、ノーズに「ダイブプレーン」を追加することで、ホイール周辺の空気の流れをスムーズにし、ダウンフォースを高めている。

ドラッグとダウンフォース関連のデバイスは以上だが、シャシーにかかる負荷が増えるという問題も残っている。

セミアクティブ・サスペンションのスプリングレートは、フロントアクスルで30%、リアで15%増加している。

4つのホイールセンサーと3つのボディ加速度センサーがダンパー調整にスピードと鋭さを加える。ダンパー自体も新しいものとなり、圧縮用と伸縮用の2つの独立したバルブが備わっている。

ステアリングホイールに回転式コントロールがあり、トラックモードでは手動でセットアップを微調整することができる。

ポルシェによると、以上の結果、サーキット走行ではダイブ、ピッチング、ローリングが大幅に減少し、中速コーナーで特に効果的であるという。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェシ・クロス

    Jesse Crosse

    英国編集部テクニカル・ディレクター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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