「バック駐車」に勝るものはない! 「前向き駐車」を推奨するメディアに一言 英国記者の視点

公開 : 2024.12.25 18:05

英国の全国紙で最近、「前向き駐車」を推奨する記事があった。AUTOCAR英国編集部のマット・プライヤー記者はこれを「完全な誤り」と断じて、バック駐車の利点を解説する。

安全で時間もかからない駐車方法

最初に申し上げておきたいが、筆者(英国人)はマスメディアを日常的にけなすような人間ではない。なぜなら、基本的には筆者もその一部だからだ。

マスメディアが大衆を騙そうとしていると考えるような、「羊たちよ、目覚めよ」的な陰謀論者でもない。

英国の全国紙で「前向き駐車」を推奨する記事が複数あったが、それはいかがなものか……。
英国の全国紙で「前向き駐車」を推奨する記事が複数あったが、それはいかがなものか……。

それ以上に、筆者は「わたしは~ではない」という文章で始めて、「しかし」と続ける人に対して強い疑念を抱いている。なぜなら、そこに書かれていることは、しばしば不穏な内容であることが多いからだ。

これらの注意事項を踏まえた上で、以下に述べる。筆者は、マスメディアが大衆を欺こうとしていると考える陰謀論者ではないが、最近、英国の全国紙のコラムニスト2名が提起した問題については、さすがに彼らの真意を疑わざるを得なかった。

紙面で取り上げられたのは駐車場での駐車方法のことだ。この件について、特に強い意見があるとは思っていなかった。

筆者は普段、必ずというわけではないが、道路に対して垂直の駐車スペースにはバックで駐車する。今までもそうだったし、これからもそうするだろう。その方が簡単だと感じているし、出庫するときも間違いなく楽だ。

それだけだ。普段はあまり考えないテーマだし、前向き駐車を好む人たちに対しても特にネガティブな感情を抱いてはいない。ただ、心の中では静かに、時間がかかる野蛮な行為だと思っている。出庫の際に筆者が通り過ぎるのを待っているような場面では、特に。

ほとんどの人は、バック駐車の方が客観的に見て良いとわかっているものだと、筆者は思っていた。唯一の欠点は、壁際に駐車するとトランクにアクセスしにくくなることだ。これは確かに欠点である。

しかし、買い物かごからトランクに荷物を積み込む必要がないのであれば、バックで駐車するのが断然良い。

いずれにしても、誰もが自分と同じように駐車しているわけではないが、筆者はそれについてあれこれ言うつもりはなかった。このコラムを12年近く書いているが、一度も言及したことはない。しかし、彼らが積極的にバック駐車に矛先を向けてきたとなると、声を大にして言わなければならない。

過去6か月間に2度ほど(該当するコラムニストや新聞名は挙げないが)、クルマの愛好家でもなければ、物理学に精通しているとも思えないマスメディアのジャーナリストたちが、バックで駐車するドライバーは間違っていると主張する記事を読んだ。

バック駐車は明らかに間違いで、前向き駐車の方が優れており、賢く、高潔で利己的でない。客観的に見て「ベター」であり、時間もかからず、面倒も少ないという。

うーん。仕方ないので、「デバンキング」と呼ばれる作業を始めよう。情報に誤りがないかどうかを検証するプロセスだ。垂直の駐車スペースにバックで駐車する方が良い理由は、フォークリフトの後輪が操舵輪となっているのと同じ理由だ。先端の位置をより正確に決めることができる。

縦列駐車の場合も、同じ原理が当てはまる。前進しながら駐車する方が難しく、他の車両や縁石にぶつかる可能性もある。

さらに、駐車スペースに前進で進入する際、駐車場のラインがボンネットにすぐに隠れてしまう。

バックで駐車する場合は、そのラインがサイドミラーに映るので、クルマを中央に維持しやすくなる。

そして、出庫するときにも、はるかにクリアで安全な視界が得られる。つまり、びっしりと並んだクルマの間を縫うようにしてピリピリしながら出庫するのではなく(筆者がこれを書いている間にも、オフィス向かいの立体駐車場で古ぼけたヴォグゾールモッカがやっている)、1回のスムーズな操作で済むのだ。

物理的にも客観的にも、バック駐車の方が良い。バックで駐車しない人がいても構わないが、どうかマスメディアは、それが正しいかのような振りをして我々に近づかないでほしい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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