英製スポーツ・クラシックの「ド定番」 MGBに代わる1台を選ぶ(1) 残った髪を風になびかせて
公開 : 2025.01.12 17:45
後期型でも前期型でも魅力は大きく違わない
1967年には、パワフルな直列6気筒エンジンが追加。1973年には、更にたくましいローバー由来のV8エンジンも選べるようになっている。ちなみに、MGを得意としたガレージを営んでいたケン・コステロ氏は、独自にV8エンジンへの換装を手掛けてもいる。
MGBは、1980年に生産が終了する。だが45年が経過した今でも、所有しやすいブリティッシュ・スポーツとして支持者は多い。グレートブリテン島を探せば、前オーナーが愛情を注ぎ込んできた素晴らしい1台を、現実的な価格で購入できる。
特にお手頃なのは、車高が持ち上げられ、前後にポリウレタン製の黒いバンパーが付いた後期型。筆者も2台を所有していたが、魅力は前期型と大きく違わないと断言したい。
ソフトトップのロードスターがお気に召さない場合は、ピニンファリーナ社による2+2のクーペボディをまとった、MGB GTも選べる。これは1965年に追加されている。
絵に書いたような理想のMGBなら、今回ご登場願ったスチールバンパーの1台だろう。タータンレッドの美しいロードスター・ボディに、クロームメッキのワイヤーホイールを履く1966年式のMGB Mk2で、オーナーはペトゥラ・コーンウォール氏だ。
この年式はスイートスポット。後期型の5ベアリング・エンジンを積み、開閉しやすいソフトトップが採用されている。それでいて、前期型の混じり気ないルックスも保たれている。好条件の例でも、今回設定した予算内で探せるはず。
公道を颯爽と走るために磨かれた特長
爽やかな春の光を浴びながらドライブするなら、こんなクルマが理想的ではないだろうか。お気に入りのコートを着て街を闊歩するように、いい気分に浸れるはず。乗員空間も荷室も広く、乗り心地はしなやか。身長の高い大人でも、快適に走れる。
サーキットを攻めれば、弱点も見えてくる。レッドゾーンは5500rpmだが、4000rpm以上回しても余り意味はない。左右に連続するコーナーを抜ければ、ボディは左右に揺さぶられ、軽くは感じにくい。脱出加速で気張りすぎると、オーバーステアに転じる。
MGBは、公道を颯爽と走るために磨かれている。それを忘れなければ、素晴らしい時間を享受できるはず。
頭に残った髪を風になびかせて、独特のエグゾーストノートに包まれながら、ゆったり景色を楽しむのがイイ。ラック&ピニオン式ステアリングならではの、安定した手応えと滑らかさを味わいながらカーブを抜ければ、自然に笑顔が湧いてくる。
英国でクラシックカーを嗜む人の場合、MGBを過去に経験している割合が多い。楽しい旅の記憶や、修理での苦労話。こんな話題で盛り上がれるのも、大きな魅力といえる。筆者もそれを味わってきた。今後も変わらず続くに違いない。
編集部によるマニア度スコア
コストパフォーマンス:4/5
メンテナンス性:5/5
修理部品の入手性:5/5
実用性・使いやすさ:4/5
運転体験の魅力:3/5
クルマ好きの話題性:2/5(英国では)
合計:23/30
MGB(1965〜1980年/英国仕様)のスペック
英国価格:1217ポンド(新車時)/1万7000ポンド(約332万円/現在)以下
生産数:約50万台
最高速度:170km/h
0-97km/h加速:11.5秒
燃費:10.3km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:920kg
パワートレイン:直列4気筒1798cc 自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:96ps/5400rpm
最大トルク:15.1kg-m/3000rpm
ギアボックス:4速マニュアル+オーバードライブ(後輪駆動)
この続きは、MGBに代わる1台を選ぶ(2)にて。