「凸型シルエット」はアイコン! ランチア・フルビア・クーペ MGBに代わる1台を選ぶ(2)

公開 : 2025.01.12 17:46

英国スポーツ・クラシックの定番:MGB 同等の予算で選べる、対抗馬的モデルは? 運転の楽しさで劣らない個性派は? ランチアにポルシェ、プジョーまで 英編集部が5台を選出

上級・小型なパーソナル・クーペ

フルビアの開発で、サルーンと同様にエレガントなクーペモデルの重要性を、ランチアは再確認したといえる。少し遅すぎた感はあったが、フィアット傘下へ収まる直前、カルロ・ペゼンティ氏が経営権を握っていた時代の、妥当な戦略の1つとなった。

時代を超越した美しさをたたえる、上級・小型なパーソナル・クーペは、ブランドの活性化に繋がった。経営を立て直すほどではなかったものの、好調に売れ、商業的にしっかり機能するモデルでもあった。

ランチア・フルビア・クーペ(1965〜1976年/欧州仕様)
ランチア・フルビア・クーペ(1965〜1976年/欧州仕様)

発売は1965年で、1976年まで生産され、販売数は13万4000台以上。後期型のフルビア・クーペ 3(シリーズ3)は、フィアットエンジン搭載のランチアへ否定的なブランドファンを、受け止める役目を担った。

晩年まで支持率は落ちることがなく、次期モデルとしてランチア・ベータ・クーペが1973年に登場するものの、販売数では勝っていたほど。プラスティック製のステアリングホイールにホワイトのメーター、クロス張りのシートは、多くの人に好まれた。

1965年から1973年までは、ほぼ毎年のようにイタリアのラリーでも活躍。1972年のモンテカルロ・ラリーでは、強力なドイツ勢を退け優勝している。

V型4気筒の前輪駆動 喜びと充足感を与える

フルビア・クーペの歴史をすべてご紹介すると、非常に長くなってしまう。ざっくり振り返るなら、初期型のシリーズ1は1970年まで生産された。大きなヘッドライトをフロントに備え、V型4気筒エンジンに、4速MTが組み合わされていた。

シリーズ2は1970年に登場。フロントグリルがスリムになり、ライトが小さくなり、マニュアルは5速へ増えている。シリーズ3は、厳密にはシリーズ2の最終版。区別するため、英国仕様では外側のヘッドライトの位置が1段高くなっていた。

ランチア・フルビア・クーペ(1965〜1976年/欧州仕様)
ランチア・フルビア・クーペ(1965〜1976年/欧州仕様)

ザガート社製ボディのフルビア・スポルトを除いて、ティーポ818と呼ばれるフルビア・クーペには9種類があった。最高出力は1.2Lの81psから、1.6LのHFで発揮した131psまで幅が広い。

排気量を問わず、いずれもエンジンはV4で共通。大きく傾斜した状態でボンネット内に積まれ、前輪を駆動する。フロント・サスペンションは横置きのリーフスプリングで、ブレーキは前後ともディスク。形状の美しいサブフレームなど、特徴は少なくない。

ランチアらしく、細部まで配慮された製造品質と、優れた運転体験が融合。違いがわかる人へ、喜びと充足感を与えるパッケージングといえた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アラステア・クレメンツ

    Alastair Clements

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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