「凸型シルエット」はアイコン! ランチア・フルビア・クーペ MGBに代わる1台を選ぶ(2)
公開 : 2025.01.12 17:46
凸型シルエットはランチアのアイコンの1つ
端正なスタイリングを担当したのは、社内デザイナーだったピエトロ・カスタニェロ氏。短いテールに中央が僅かに凹んだリアウインドウ、無駄のない凸型シルエットは、アプリリアやストラトスなどと並んで、ランチアのアイコンの1つといえる。
左右が非対称な、機能的なダッシュボードも魅力の1つ。何度かアップデートは繰り返されたが、デザイナーたちはボディやインテリアに殆ど手を加えなかった。2003年に提案されたコンセプトカーでも、フルビア・クーペがモチーフにされたほど。
発表当初、前輪駆動のフルビアは価格がお高めだった。小柄な2+2のクーペで、ロードスターのMGBと比較されることは少なかったといえる。しかし1974年を迎える頃には、クーペのMGB GTの方が英国では高価になり、最高速度でも並んでいた。
今回ご登場いただいた、ロッソ・ヨークの塗装が美しいフルビア・クーペは、シリーズ3。歴代4オーナー車で、フルビア・クラシック社が執筆時点では販売している。同社はランチアのスペシャリストで、これまで250台以上のフルビアを取引してきたという。
乗り手の興奮を誘いつつ洗練されている
多くのランチアと同様に、フルビア・クーペは運転してすぐに魅了されるわけではない。強く共感する人も、限られるかもしれない。
V4エンジンは、2000rpm以上回さないと充分な効果を生まない。ステアリングホイールは、低速域では重い。シフトレバーはストロークが長く、動きは渋めで、滑らかな変速が少し難しい。1速が横に飛び出た、ドッグレッグ・パターンに慣れる必要もある。
しかし、アクセルレスポンスは鋭敏で、ギアを選び終わればダイレクト。高い圧縮比と相まって、6500rpmめがけて心地よい唸りを響かせながら吹け上がる。こうなると、変速のしにくさは忘れてしまうはず。
速度が増すほどステアリングの感触は良くなり、ヘアピンカーブ以外の操縦性はニュートラル。安定性は高く、乗り心地も良い。ドライバーの興奮を誘いつつ、洗練されている。どこか生意気な印象も漂う。
MGB以上の充足感を、フルビア・クーペなら得られるように思う。今回のスコアは、そこまで高くないけれど。
編集部によるマニア度スコア
コストパフォーマンス:2/5
メンテナンス性:2/5
修理部品の入手性:3/5
実用性・使いやすさ:4/5
運転体験の魅力:5/5
クルマ好きの話題性:5/5
合計:21/30
ランチア・フルビア・クーペ(1965年〜1976年/欧州仕様)のスペック
英国価格:2177ポンド(新車時)/2万ポンド(約390万円/現在)以下
生産数:13万4035台(フルビア合計)
最高速度:168km/h
0-97km/h加速:13.0秒
燃費:9.6km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:930kg
パワートレイン:V型4気筒1298cc 自然吸気SOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:91ps/6000rpm
最大トルク:11.5kg-m/4500rpm
ギアボックス:5速マニュアル(前輪駆動)
この続きは、MGBに代わる1台を選ぶ(3)にて。