「凸型シルエット」はアイコン! ランチア・フルビア・クーペ MGBに代わる1台を選ぶ(2)

公開 : 2025.01.12 17:46

凸型シルエットはランチアのアイコンの1つ

端正なスタイリングを担当したのは、社内デザイナーだったピエトロ・カスタニェロ氏。短いテールに中央が僅かに凹んだリアウインドウ、無駄のない凸型シルエットは、アプリリアやストラトスなどと並んで、ランチアのアイコンの1つといえる。

左右が非対称な、機能的なダッシュボードも魅力の1つ。何度かアップデートは繰り返されたが、デザイナーたちはボディやインテリアに殆ど手を加えなかった。2003年に提案されたコンセプトカーでも、フルビア・クーペがモチーフにされたほど。

ランチア・フルビア・クーペ(1965〜1976年/欧州仕様)
ランチア・フルビア・クーペ(1965〜1976年/欧州仕様)

発表当初、前輪駆動のフルビアは価格がお高めだった。小柄な2+2のクーペで、ロードスターのMGBと比較されることは少なかったといえる。しかし1974年を迎える頃には、クーペのMGB GTの方が英国では高価になり、最高速度でも並んでいた。

今回ご登場いただいた、ロッソ・ヨークの塗装が美しいフルビア・クーペは、シリーズ3。歴代4オーナー車で、フルビア・クラシック社が執筆時点では販売している。同社はランチアのスペシャリストで、これまで250台以上のフルビアを取引してきたという。

乗り手の興奮を誘いつつ洗練されている

多くのランチアと同様に、フルビア・クーペは運転してすぐに魅了されるわけではない。強く共感する人も、限られるかもしれない。

V4エンジンは、2000rpm以上回さないと充分な効果を生まない。ステアリングホイールは、低速域では重い。シフトレバーはストロークが長く、動きは渋めで、滑らかな変速が少し難しい。1速が横に飛び出た、ドッグレッグ・パターンに慣れる必要もある。

ランチア・フルビア・クーペ(1965〜1976年/欧州仕様)
ランチア・フルビア・クーペ(1965〜1976年/欧州仕様)

しかし、アクセルレスポンスは鋭敏で、ギアを選び終わればダイレクト。高い圧縮比と相まって、6500rpmめがけて心地よい唸りを響かせながら吹け上がる。こうなると、変速のしにくさは忘れてしまうはず。

速度が増すほどステアリングの感触は良くなり、ヘアピンカーブ以外の操縦性はニュートラル。安定性は高く、乗り心地も良い。ドライバーの興奮を誘いつつ、洗練されている。どこか生意気な印象も漂う。

MGB以上の充足感を、フルビア・クーペなら得られるように思う。今回のスコアは、そこまで高くないけれど。

編集部によるマニア度スコア

コストパフォーマンス:2/5
メンテナンス性:2/5
修理部品の入手性:3/5
実用性・使いやすさ:4/5
運転体験の魅力:5/5
クルマ好きの話題性:5/5
合計:21/30

ランチア・フルビア・クーペ(1965年〜1976年/欧州仕様)のスペック

英国価格:2177ポンド(新車時)/2万ポンド(約390万円/現在)以下
生産数:13万4035台(フルビア合計)
最高速度:168km/h
0-97km/h加速:13.0秒
燃費:9.6km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:930kg
パワートレイン:V型4気筒1298cc 自然吸気SOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:91ps/6000rpm
最大トルク:11.5kg-m/4500rpm
ギアボックス:5速マニュアル(前輪駆動)

この続きは、MGBに代わる1台を選ぶ(3)にて。

ランチア・フルビア・クーペを推すマーティン・バックリー
ランチア・フルビア・クーペを推すマーティン・バックリー

記事に関わった人々

  • 執筆

    アラステア・クレメンツ

    Alastair Clements

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

MGBに代わる1台を選ぶの前後関係

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