ブレグジット(EU離脱)で面倒になった中古車の個人輸入 英国のクルマ事情

公開 : 2024.12.30 06:05

国内で買うよりも安く手に入る

ニックさんの話に戻る。初代トゥインゴはフランスで人気が高まっており、ニックさんはオークションサイトのleboncoin.frで、1993年式の個体が3500ポンドで売られているのを見つけた。

取引が成立したので、次にやるべきことは保険の手続きだった。外国で登録されたクルマの保険加入は、英国人にとって通常簡単なことではないが、フランス語が堪能なニックさんは、フランス国内から英国の自宅まで運転できるように、30日間の保険契約を交渉で取り付けた。

ニック・ベイリーさんがフランスから英国に輸入した
ニック・ベイリーさんがフランスから英国に輸入した

一方、ニックさんが利用した輸入代行業者が、クルマの輸入と登録申請の手続きを代行した。

5%のVAT、初回登録料55ポンド(約1万円)、300ポンド(約6万円)の自動車税、代行手数料などを含め、ニックさんは合計1400ポンド(約28万円)を支払った。

英国国内で買うよりも安く、珍しいクルマを海外で入手できるという魅力に惹かれた愛好家は他にもいる。ジェフ・ラグルズさんもその1人だ。

彼は最近、1977年式のフォードフィエスタ1.1 Sを2100ポンド(約42万円)で購入した。これもleboncoin.frで広告が出ていたものだ。保険の問題を避けるため、フランス在住の友人にクルマを購入して保険をかけてもらい、その人から購入するという流れをとった。

フランスでは保険は所有者ではなくクルマに対してかけられるので、ジェフさんはフィエスタを港まで運転し、英国に輸入した後は自宅までトレーラーで牽引して運んだ。

「英国の相場は5000ポンド(約100万円)くらいなので、満足していますよ。(イタリア製の)イノチェンティ・ミニをすでに持っているため、フィエスタが左ハンドルでも問題ないんです」とジェフさんは言う。

DVLAはAUTOCARの問い合わせに対し、欧州から英国に輸入された中古車の台数について明らかにしなかったが、輸入代行業者のマイカー・インポート社は、週に最大8台を輸入していると述べた。

同社のウィル・スミス取締役は、「古いクルマにかけられるVATはわずか5%で、コンディションの良い希少車を求める愛好家にとっては、それほど大きな障害ではありません。当社の輸送車は毎週出動し、クルマを集めています」と説明する。

英国で登録された自分のトゥインゴと再会したニック・ベイリーさんは、この小さなクルマをもっとよく知りたいと思っている。

ただし、レストアはしないつもりだという。「少し手入れをするだけです。それ以外は、そのままにしておきます」

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョン・エバンス

    John Evans

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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