【高級車ならぬ高旧車が流行中】一時代を築いたトヨタ・セルシオと日産シーマは国産高級車の文化遺産!

公開 : 2024.12.31 11:45

最近、1980~2000年代初頭にかけての国産高級車を文化遺産として大切に乗ろうという動きが広がっています。それは『高旧車』と呼ばれ、トヨタ・セルシオと日産シーマが主役となっているようです。木原寛明がその2台を振り返ります。

国産高級車を文化遺産として大切に乗ろうという動き

初代シーマに30年以上、大切に乗り続ける俳優の伊藤かずえさんが、日産で愛車を復元(リフレッシュ)したニュースが世間を賑わせたのはご存じのとおり。最近、1980年代から2000年代初頭にかけての国産高級車を文化遺産として大切に乗ろうという動きが広がっている。

それがトヨタセンチュリーと日産プレジデントを頂点とする『高旧車』だ。その主役はトヨタのセルシオと日産のシーマで、ノーマルにこだわる人もいれば、当時流行したドレスアップアイテムを装着して、さりげなく他車との違いをアピールする人も多いようだ。

高級車ならぬ『高旧車』の主役はトヨタ・セルシオ(上)と日産シーマ(下)。
高級車ならぬ『高旧車』の主役はトヨタ・セルシオ(上)と日産シーマ(下)。    トヨタ自動車/日産自動車

日本のパーソナルカーといえば、長年トヨタ・クラウン日産セドリック/グロリアが頂上決戦を繰り広げてきたが、1988年、そのパワーバランスに異変が起きた。日産シーマの登場だ。

ポジション的には、クラウンのワイドボディに対抗するセド/グロの上級機種だが、独自デザインの伸びやかなスタイリングは輸入車を思わせ、パワートレインは強力。さらに、バブル経済の追い風を受けて、豪華絢爛な装備が満載。『いつかはクラウン』というキャッチフレーズが浸透するほどトヨタ優勢だった高級車市場を覆し、『シーマ現象』なる言葉が生まれるほどのヒット作となった。

セルシオがライバル視したのは欧米のプレミアムブランド

しかし、トヨタも黙って見過ごしてはいなかった。翌1989年、セルシオを発表したのだ。国外では高級車部門であるレクサスのフラッグシップとして販売するため、セルシオがライバル視したのは日本車ではなく、欧米のプレミアムブランドが擁する高級サルーンであった。

NVHなどの問題に発生源から対処する源流主義を掲げて、部品精度の段階からレベルアップが図られ、異次元の静粛性は世界の高級車のベンチマークになった。そのキモとなった1UZ-FE型V8は、欧州メーカーがエンジン開発の手本にしたと言われたほどだ。

俳優の伊藤かずえさんが、日産で愛車を復元(リフレッシュ)したニュースが話題となった。
俳優の伊藤かずえさんが、日産で愛車を復元(リフレッシュ)したニュースが話題となった。    日産自動車

その後、セルシオは3世代を数えたのち、2006年をもってレクサスLSと統合。一方のシーマは、3代目で海外展開された高級車部門であるインフィニティの最上位機種、Q45の兄弟車となるが、2010年に4代目が生産終了。2012年に車名は復活したものの、かつてのような存在感を示すことはできず、モデルチェンジすることなく2022年に姿を消した。

かつては憧れの高級車であり、エアロやローダウンサスを組んだ、いわゆるVIPカーカスタムのベース車としても人気を博したシーマとセルシオ。新車市場からその車名は消えたが、オリジナル派にもカスタム派にも、いまもって注目される日本の名車だ。ここからはその両車を振り返ってみたい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    木原寛明

    Hiroaki Kihara

    1965年生まれ。玉川大学では体育会ノリの自動車工学研究部に所属し、まだ未舗装だった峠道を走りまくった。最初の愛車(本当は父のもの)は2代目プレリュード(5MT)。次がフルチューンのランサーEXターボ。卒業してレースの世界へと足を踏み入れたものの、フォーミュラまで乗って都合3年で挫折。26歳で自動車雑誌の編集部の門を叩き、紙時代の『AUTOCAR JAPAN』を経て、気が付けばこの業界に30年以上。そろそろオーバーホールが必要なお年頃ですが頑張ります!
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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