【昭和の青春的ホットハッチの世界】最後のルノー・スポールと寸止めゴルフGTI!

公開 : 2025.01.03 11:45  更新 : 2025.01.03 12:11

寸止めが効いたサジ加減こそゴルフGTIの真骨頂

今回ウルティムとともに連れ出したゴルフGTIは、元祖ホットハッチというべき存在だ。1974年に初代ゴルフに用意されたGTIこそが、今に続く高性能FFハッチバックの最初であり、欧州ではホットハッチを『GTIクラス』と総称することも多い。

メガーヌR.S.がフロントサスペンションや後輪操舵など、シャシーの基本ハードウエアにまで手を入れているの対して、ゴルフGTIの基本設計は、エンジン以外はあくまで標準ゴルフのそれと変わりない。日本仕様は電子制御可変ダンパーが最初から備わるが、欧州では固定減衰ダンパーが標準である。

ゴルフGTIはすでにマイナーチェンジされているが、今回の試乗車は従来型となる。
ゴルフGTIはすでにマイナーチェンジされているが、今回の試乗車は従来型となる。    佐藤亮太

ちなみに、ゴルフGTIはすでにマイナーチェンジされたが、今回の試乗車は従来型。とはいえ、各種情報を見るに、マイチェンモデルでも走り味には大きな変化はないようだ。

2.0リッター4気筒直噴ターボというエンジン形式は、メガーヌR.S.も含めたライバルと同等といっていいが、245ps/370Nmというピーク性能には『寸止め感』が漂う。それを受け止めるシャシーがメガーヌR.S.ほど凝ったものではないのに加えて、VWにはゴルフRという4WDの上位モデルがあることも無関係ではないだろう。

ただ、ギリギリまで鍛え上げられたメガーヌR.S.と比較すると、その寸止めが効いたサジ加減こそが、ゴルフGTIの真骨頂でもある。ダンパーをコンフォート寄りに設定したゴルフGTIは、そこいらの上級セダンを凌ぐほどの乗り心地を披露する。それでも400Nm近い最大トルクを前輪だけで受け止めるのは簡単ではないはずだが、そこはメガーヌR.S.にも備わらない電子制御LSDが、実にいい仕事をしている。

今後はBEV化にひた走ると思われたVWも、その歩みのスピードは少しばかり緩むようである。それでも、これまでのような際限ないスピード競争とはいかないかもしれないが、ゴルフGTIには元祖としてホットハッチの火を消さないでほしいと願う。

記事に関わった人々

  • 執筆

    佐野弘宗

    Hiromune Sano

    1968年生まれ。大学卒業後、ネコ・パブリッシング入社。カー・マガジン等で編集作業に携わるうちに3年遅れで入社してきた後藤比東至と運命的な出逢いを果たす。97年、2人でモンキープロダクションを設立するべく独立。現在はモータージャーナリストとして「週刊プレイボーイ」「AUTOCAR JAPAN」「○○のすべてシリーズ」他、多数の雑誌、ウェブ等で活躍中。
  • 撮影

    佐藤亮太

    Ryota Sato

    1980年生まれ。出版社・制作会社で編集経験を積んだのち、クルマ撮影の楽しさに魅了され独学で撮影技術を習得。2015年に独立し、ロケやスタジオ、レース等ジャンルを問わない撮影を信条とする。現在はスーパーカーブランドをはじめとする自動車メーカーのオフィシャル撮影や、広告・web・雑誌の表紙を飾る写真など、様々な媒体向けに撮影。ライフワークとしてハッセルブラッドを使い、生涯のテーマとしてクラシックカーを撮影し続けている。佐藤亮太公式HPhttps://photoroom-sakkas.jp/ 日本写真家協会(JPS)会員
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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