革命的「4座+4WD」のワゴン! フェラーリFF  UK中古車ガイド 複雑なトランスファーにご用心

公開 : 2025.01.12 19:05

エンツォ譲りのV12をワゴンボディのフロントに積んだ、4シーターで四輪駆動のFF 通常はFR ラグジュアリーな内装 複雑な駆動システムが懸念? 英国編集部が魅力を振り返る

革命的な4座+四輪駆動のフェラーリ

2011年に発売されたフェラーリFFは、このブランドにとって革命的なモデルといえた。大人4名が乗れ、少なくない荷物を積め、高度な四輪駆動システムが実装されていた。FFはフロントエンジン・フロントドライブではなく、フェラーリ・フォーの略だ。

ポジションとしては、612 スカリエッティの後継ではあったが、高い実用性と天候不問の走破性を得ていた点が、大きな違いといえた。400iやモンディアルなど、4シーターのフェラーリは以前にも存在したが、ここまで巧妙な製品計画は練られていなかった。

フェラーリFF(2011〜2016年/英国仕様)
フェラーリFF(2011〜2016年/英国仕様)

同時期の458 イタリアや599 GTBと比較して、普段使いとの親和性は遥かに高い。ピニンファリーナ社によるシューティングブレークのフォルムは、今でも強い心象を残す。魅力や使い勝手は、10年以上が過ぎた今でも衰えていない。

長く伸びた彫刻的なボンネットの内側には、スーパーカーのエンツォ・フェラーリ由来となる、6.3L V型12気筒エンジンが収まる。自然吸気ながら、最高出力は660ps。0-100km/h加速は3.7秒で、0-200km/h加速も599 GTBと殆ど変わらない。

グランドツアラーとして、パワーデリバリーは線形的で非常に滑らか。FF独自の四輪駆動システムが生む高度な安定性で、大馬力へ圧倒されることは殆どないはず。

通常は後輪駆動 ラグジュアリーな内装

FFは、通常は後輪駆動。トランスアクスル・レイアウトの7速デュアルクラッチATが、太いリアタイヤへ最大69.6kg-mのトルクを伝える。

フロントタイヤには必要な場面でトルクが割り振られるが、これには個別に用意された2速ATが介される。2基の電子制御クラッチでリア側とのパワーバランスは整えられ、トルクベクタリング付きのデフとしても働き、トラクション制御の役目も果たす。

フェラーリFF(2011〜2016年/英国仕様)
フェラーリFF(2011〜2016年/英国仕様)

乾燥した路面なら、高速コーナーを駆け抜けた時の印象は、フロントエンジン・リアドライブの大型グランドツアラー。タイトなコーナーで過度なオーバーステアが生じると、フロントタイヤがアシストに加わり、ラインを立て直してくれる。

インテリアは、もちろん極めてラグジュアリー。上質な本皮と金属が、惜しみなく用いられている。ダッシュボードのデザインは有機的で、前時代感は若干否めないが。

ステアリングホイールには、マネッティーノ・ダイヤルが備わる。それでも、最新モデルのように沢山のボタンが並ぶわけではない。深く彫られたリアシートには、前述の通り大人も座れる。荷室は、中型ハッチバックと同等の容量がある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サム・フィリップス

    Sam Phillips

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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