2024年もいろいろ大変だった 自動車業界ニュース振り返り(欧州編) EV低迷、関税、価格競争…
公開 : 2025.01.05 06:05
関税の混乱
こうした状況の中、同じ欧州の自動車メーカーは、中国製EVの販売増加への対応をめぐって、政府関係者と争っていた。BYDやMGといったメーカーは、主に中国政府からの多額の生産コスト補助のおかげで価格面でライバルを出し抜き、大きな市場シェアを獲得していた。
欧州委員会の解決策は、中国で製造されたすべてのEVに高額の輸入関税を課すというものだった。BYDと吉利汽車にはそれぞれ17%と18.8%の税金が課されたが、MGの親会社である上海汽車には、すでに支払っていた10%に加えて最高税率の35.3%が課された。
中国で事業を展開する欧米の自動車メーカーも影響を受けた。その中には、iX3やミニ・クーパーEVなどを中国で製造しているBMWや、ルノー(ダチア・スプリング)も含まれ、両社とも20.7%の追加関税を課された。
吉利汽車傘下のボルボは、関税を回避する目的もあり、一部のEVの欧州生産を今後さらに増やす計画を発表した。上海に工場を持つテスラは、中国での補助金がライバル企業よりも低いため、7.8%という低い税率で済んだ。
この関税は試験期間を経て11月に承認されたもので、少なくとも5年間は継続される。この措置は欧州の自動車メーカーに公平な競争の場を与えることを目的としているが、業界をリードするいくつかの企業は関税導入に猛反発している。
スコダの販売部門トップであるマーティン・ヤーン氏はAUTOCARの取材に対し、「関税で状況を解決できるとは思わない」と語った。ルノーのCEOであるルカ・デ・メオ氏は、全面的な貿易戦争が勃発する前に、中国の自動車業界と「合意を見つける」べきだとした。
中国は当然のことながら、欧州自動車メーカーの同地域への供給を抑制することで対応しようとしており、その影響はすでに苦戦を強いられているフォルクスワーゲン・グループに現れている。アウディ、ベントレー、ポルシェを擁する同社は、税引き前利益が27億5000万ポンド(約5400億円)減少したと報告し、帳尻を合わせるために「難しい決断」を迫られた。その中には、大幅な雇用削減も含まれている。固定費(電気代や賃金など)の上昇に加え、最大の市場である中国での販売が10%減少したことが同社に大きな打撃を与えた。
低価格車の復活
最近まで、EVの開発は大型の高級車が中心であった。メーカーは初期投資の利益を最大限に引き出し、EVの生産コストの高さを回収しようとしていたからだ。
しかし、EVへの需要が低迷し、排ガス規制が強化されるにつれ、小型で安価なEVの開発に焦点を当てる必要性が明らかになってきた。
中国の自動車メーカーはすでに、2万5000ポンド(約500万円)以下のMG 4のようなクルマを発売しており、これがMGの2023年の売上高が13億ポンド(約2600億円)に達するきっかけとなった。
もちろん、国からの補助を受けずに小型EVで利益を上げられるかどうかは、他者の判断に委ねられる。
3月、欧州の自動車ブランドが苦境に立たされている中、デ・メオ氏は攻勢に転じ、欧州の規制は「客観的に高級モデルを優遇している」と批判した。同氏は、再び手頃な価格のクルマの開発を積極的に推進することで、バランスを是正するよう当局に求めた。
政府からの反応は何もなかったが、ルノー・グループはそれでも計画を進め、航続距離220kmで必要最小限の装備を持つEV、ダチア・スプリングを、1万4995ポンド(約295万円)という驚きの低価格で発売した。
重要なのは、これが欧州で最も安いEVであることだ。中国で製造することでこの価格を実現した。20.7%の輸入関税が課せられるにもかかわらず、生産拠点を欧州に移す計画はない。
ルノーはその後、フランス製で2万2995ポンド(約450万円)からの価格設定の5を発表し、フォルクスワーゲンは2万5000ポンド以下の「ID.2」と2万ポンド(約400万円)以下の「ID.1」を準備中である。