実験的「F」の終止符 レクサスRC F アルティメット・エディションへ試乗 魅惑的なV8の音響体験

公開 : 2025.01.05 19:05

V8エンジンを積むレクサスのRC 欧州仕様はアルティメットで終止符 他にはない雰囲気を漂わせる車内 魅惑的な音響体験 調和の取れた操縦性 ハイライトは操舵感 英国編集部が評価

アルティメット・エディションで終止符

「F」の頭文字で提供される高性能なレクサスが、ドイツ勢へ対峙できるモデルだと、われわれが認知するようになったのは最近といえる。だが、戦う体力は尽きたのだろうか。

IS FとGS Fという高性能サルーンは、欧州市場から姿を消して久しい。今回試乗したクーペのRC Fも、アルティメット・エディションの投入で終止符が打たれるという。

レクサスRC Fアルティメット・エディション(英国仕様)
レクサスRC Fアルティメット・エディション(英国仕様)

約20年に渡って、レクサスは実験的な素晴らしいモデルを複数投入してきた。馬力競争にとらわれることなく、ノイジーでエキサイティングなモデルを生み出せる事実を、我々に知らしめてきた。大胆かつ独自性の高い内容で。

LFAの後継に相当するような、ハイブリッド・スーパーカーの噂はある。完全な電動モデルになるという話も聞こえてくる。しかし、5.0L V8エンジンを積んだRC Fを最後に味わわずして、その未来へ触れることはできないだろう。

RC Fの発売は2014年。その頃、メルセデスAMGの63には6.2L V8エンジンが載っていた。2019年にフェイスリフトを受け、シャシーの強化と軽量化が図られ、トラック・エディションが登場。エンジンは、排気ガス規制に伴い馬力が若干削られた。

そのトラック・エディションは19インチの鍛造ホイールを履き、カーボンファイバー製ルーフとボンネット、チタン製エグゾーストでダイエット。カーボンセラミック・ブレーキも得ていた。今回試乗した、アルティメット・エディションのベースといえる。

他にはない雰囲気を漂わせる車内

RC Fの最終仕様では、トランクリッドに載るカーボン製ウイングが展開式に。30台の欧州限定で、シリアルナンバーが振られる。チタンカーバイド・グレー塗装は、250ポンド(約5万円)のオプションだ。

トルクベクタリング機能付きデフに、ファイナルレシオがショート化された8速AT、ローンチコントロールを実装。463psの最高出力と、52.9kg-mの最大トルクを発揮するが、車重は1733kgあり、後輪駆動のクーペとしては軽量とまではいえない。

レクサスRC Fアルティメット・エディション(英国仕様)
レクサスRC Fアルティメット・エディション(英国仕様)

内装には、高級な素材が惜しみなく用いられる。膨らんだボンネットが、前方視界の一部を形成。ダッシュボードは造形的に凝っていて、他にはない雰囲気がある。

サポート製の高いスポーツシートは、ブルーとブラックのツートーン。ステアリングホイールは、差し色が入ったアルカンターラで仕立てられる。センターコンソールなどにもブルーが展開され、特別な印象を与える。

モニター式のメーターパネルは、ドライブモードに応じてグラフィックが変化。見た目は素晴らしい。ただし、人間工学的には完璧ではない。座面は理想より数cm高く、ヘルメットを被ると天井との余地は殆ど残らない。

インフォテインメント・システムはパッドで操作できるが、前時代的。現在のモデル以上に扱いやすいわけではない。最近では珍しい、CDプレイヤーが備わる。

リアシートは狭いが、このクラスのクーペでは一般的なことといえる。カーボン製のバルクヘッドで仕切られ、背もたれを倒すことはできない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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