日産V6でダカール・ラリー制覇を目論むルーマニア 低価格車ブランド「ダチア」が初参戦

公開 : 2025.01.07 06:05

ルーマニアの自動車メーカーであるダチアが、同社初のモータスポーツ活動としてダカール・ラリーに参戦している。英プロドライブ社と提携するなど、豪華な顔ぶれを揃えて初出場での優勝を狙っている。

初出場での優勝、虎視眈々と

モータースポーツで初めての足跡を残すには最高の舞台だろう。競技用モータースポーツとはまったく無縁だったルーマニアの低価格車ブランド、ダチアが、3台のマシンをダカール・ラリーにエントリーさせ、壮大で過酷なレースに真っ向から挑む。

ダカール・ラリーは、その名称とはあまり関係のないサウジアラビアの砂漠で6回目の開催を迎える。1月3日から17日までの2週間にわたって行われるこのラリーで最も注目すべきポイントは、ルノー傘下のダチアが、二輪車やトラックなど計340台のエントリーに名を連ねていることだけではない。実は、優勝のチャンスがあるのだ。

ダカール・ラリーに投入したダチア・サンドライダー
ダカール・ラリーに投入したダチア・サンドライダー    ダチア

なぜなら、ダチアが初のモータースポーツ活動のパートナーとして、英国のプロドライブ社と提携するという極めて賢明な決断を下したからだ。世界屈指のスペシャリストであるプロドライブ社は、ダカールでの優勝経験はまだないが、昨年1月に世界ラリー選手権でセバスチャン・ローブが3位表彰台を獲得したハンターT1+からわかるように、ラリーについても多少の心得があることは確かだ。

ローブは、かつてのエクストリームEのパートナーであるクリスティーナ・グティエレスと、ダカール・ラリーで5度の優勝経験を持つナセル・アルアティヤとともに、ダチアのハンドルを握る。控え目に言っても、なかなかの布陣だ。

だから、希望もあるし、楽観的になる余地もある。しかし、プロドライブ社のベテランエンジニアたちは、軽率な予測を立てるほど愚かではない。ダカールを制覇するには、3台の新型ダチア・サンドライダーがプロローグと12のステージを走破しなければならない。その中には、48時間続くいわゆる「クロノ」や、「マラソン」と呼ばれるステージも含まれている。そして、まさにその名が示す通り、「エンプティクォーター」と呼ばれる無人の砂漠地帯から無傷で生還しなければならない。

スタート地点のサウジ南西部ビシャから、東部シュバイタのゴールまでの総走行距離は7700kmで、そのうち競技区間は5100kmである。 途方もない距離だ。

しかし、なぜダチアがこんなことに挑戦するのか? その答えを探るために、AUTOCARは英国バンベリーにあるプロドライブの本社を訪ねた。

日産の3.0L V6エンジンを搭載

ダチアUKのブランドディレクターであるルーク・ブロード氏によると、参戦理由は簡単に言えば「クールだから」だという。

また、予算重視のユーザー向けの頑丈なアウトドア車という新しいブランド戦略を採用し、「人間的冒険」という理念を掲げるダチアにとって、壮大なラリーは最適と言える。

ダチアは英国のプロドライブと提携し、ラリーマシンを共同開発した。
ダチアは英国のプロドライブと提携し、ラリーマシンを共同開発した。    ダチア

「目標は勝利すること」とブロード氏は言う。「しかし、同時に、市販車に影響を与える革新技術を開発するための屋外試験場でもあり、持続可能燃料の実験でもある」

その目的のため、サンドライダーはサウジアラムコ社が供給する合成燃料で走る。サンドライダーは特注のデザインで、ダチアの真骨頂であると技術責任者のフィリップ・ドゥナビン氏は語る。デザイナーがコンセプトとスタイリングに携わり、プロドライブ社とのコラボレーションはスムーズに進んだという。

サンドライダーは頑丈な鋼管シャシーを中心に設計されており、カーボンファイバー製ボディと日産の3.0L V6エンジンを載せ、特注の4×4トランスミッションを介して、BFグッドリッチ製オールテレーンタイヤを駆動する。

車両全体を見渡すと、リアのダブルスプリングとショックアブソーバーの並列配置が目立つが、これが合理的なアドバンテージを与えている。「ダンパーシステムが2つあれば、片方を失ってもクルマを走らせる手段が残っている」と、ドゥナビン氏は言う。

コックピットの後方にある大型ダクトに収納されたスペアホイールは、素早く取り外すことができる。ステージ上ではドライバーとナビゲーターは自分たちだけで作業を行わなければならないため、プロドライブ社はドライバーたちにあらゆる修理方法を徹底的に教え込んだ。

チームメンバーが物理的に彼らを手助けすることは禁じられている。それでも、サポートは常に手の届くところにある。3台のサンドライダーは、技術的バックアップとして参加するT5レーストラックに、約40~50分間隔で追いかけられることになる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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