【生まれるのが早すぎた】車載PCや通信ナビの先駆者を振り返る

公開 : 2025.01.12 08:05

カーグッズ専門ライター歴数十年、AUTOCAR JAPANのカーグッズ情報を担当する浜先秀彰が、カーナビの歴史を解説。今回は、先進的なコンセプトでありながらも定着しなかった、斬新すぎた2アイテムを振り返ります。

アゼスト・オートPCカディアスAPC935VD(クラリオン・2003年)

2001年には国内でのパソコン普及率が50%を超えたが、それを受けて2003年にクラリオンから登場した日本初の車載専用パソコンが『オートPCカディアス』だ。これは1999年にアメリカで世界初の車載専用パソコンとしてリリースされた『オートPC』の第2世代モデルと位置づけられる。

OSにはWindows CE for Automotiveを採用しており、ソフトの追加によりさまざまな機能を利用できるようになる。さらに携帯電話接続ポート、USB、PCカードスロットなどを備え、システム拡張を見据えた仕様となっていた。

一見したところカーナビのようだが、日本初の車載専用パソコン。当時の価格は33万8000円。
一見したところカーナビのようだが、日本初の車載専用パソコン。当時の価格は33万8000円。    クラリオン

当時もっとも注目されていたのはパソコンとのデータ共有ができることで、アウトルック(パソコン用メールソフト)からデータを読み込んでスケジュールの管理をしたり、アドレスブックを利用したハンズフリー通話&メール送受信などを行えた。さらに専用ブラウザによって、ウェブサイトの閲覧も可能だった。また、コンパクトフラッシュやメモリースティックなどのメモリーカードに収録している、音楽ファイル(MP3)の再生にも対応。

ナビ機能についてはパソコン上であらかじめ切り出した地図データをメモリーカードに収録して使用し、携帯電話やPHS電波を使用する通信カード経由で検索データの取得を行う。

このように一歩先の未来を進む、カーナビとは異なるベクトルの車載器だったが、車内で活用できる機能がそれほど多くなかったことや、通信速度が遅いこと、通信料金が高くランニングコストがかかること、さらに本体が30万円を超えるほど高価格だったことなどから普及は進まず、モデルチェンジもないまま姿を消してしまった。

カロッツェリア・エアーナビAVIC-T1(パイオニア・2002年)

カロッツェリアには、メディアにHDDを採用するフラッグシップの『サイバーナビ』と、DVDを採用するスタンダードの『楽ナビ』の2つのシリーズが存在していたが、そこに2002年、第3のシリーズとして加わったのが、通信を用いる『エアーナビ』だ。

当時でも携帯電話を接続してウェブサイトにアクセスできる、通信機能搭載のHDDナビやDVDナビは存在していたが、エアーナビは本体に通信モジュールを内蔵した完全な通信ナビで、本体に大容量の記録メディアを持たず、必要な情報を使用する都度サーバーから取得。常に新鮮な地図データ、検索データを利用でき、渋滞情報もリアルタイムに得られた。オプションサービスでは、ドライブスポットの最新情報を収録したライブマガジンや、最新の天気予報を地図に表示するウェザーライブ、位置情報が送信できるポイントパーティなどの機能を用意。今から20年以上も前に、現代のスマホナビアプリのような使い勝手を実現していたわけだ。

市販モデルとして世界初の通信モジュール内蔵ナビ。左側に見える四角い箱はアナログテレビチューナー。
市販モデルとして世界初の通信モジュール内蔵ナビ。左側に見える四角い箱はアナログテレビチューナー。    パイオニア

時代に先駆け、コンセプトは完璧だった。だが通信システムがまだ追いついておらず、操作レスポンスはDVDナビよりも悪く、通信圏外(郊外では意外と多かった)になると内蔵メモリーによる道路地図表示はできるものの、目的地検索やルート探索ができなかった。通信網には当時高速と言われていたKDDIのCDMA2000 1xを利用していたのだが、それでも実際に使ってみると不便な場面が多く見られたわけだ。また、販売は一般的なカーナビのような買い切りではなく、3年分の基本サービス料を含んだ購入プランを利用する、わかりにくい形だった。

そんなわけで生まれる時代が早すぎた(?)このモデルは数年で自然消滅してしまうのだが、その後2008年にはコンセプトをポータブル型ナビ(PND)に寄せて、通信モジュールを内蔵ではなく付属に変更して販売方法を見直した、2代目エアーナビへと生まれ変わった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    浜先秀彰

    Hideaki Hamasaki

    千代田工科芸術専門学校写真科を卒業後、自動車専門誌編集部スタッフを経て、フリーランスライターとして独立。現在は執筆、編集、撮影を一人で行うことも多い。カーナビやドラレコのレポートを得意とするが、守備範囲はカスタムパーツや洗車ケミカル、車内小物までを含むカー用品全般となる。YouTube「カーグッズチャンネル」を2021年より運営。

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