ハイエンドな超高級ガレージの世界 愛車を保管・展示する秘密のスペース

公開 : 2025.01.09 06:25

クルマだけでなく、クルマを保管しておく場所にもこだわりたいという人は多いだろう。世界トップクラスの高級ガレージは、保管と展示を兼ねた「ギャラリースペース」となっている。専門の建築家に詳しい話を聞いた。

高級ガレージに特化した建築家

クルマ好きの人々は、所有する車種だけでなく、あらゆるアクセサリーや工具に至るまで、強迫観念的なコレクターであることが多い。そのため、超高級車のコレクターが、最終的にクルマを保管する場所、すなわちガレージに注目するのも当然のことかもしれない。

電球が1つぶら下がっただけのプレハブ小屋ではなく、自分の愛車(おそらく複数形)を展示できる「ギャラリースペース」である。ラウンジエリアやバー、ターンテーブルを備え、自分や友人たちが最新の愛車をあらゆる角度から鑑賞できるようになっている。

邸宅の地下に設けられたガレージ。少なくとも25台を駐車できるスペースがある。
邸宅の地下に設けられたガレージ。少なくとも25台を駐車できるスペースがある。

今この瞬間にも、世界のどこかで8人のクルマ愛好家が、非常に野心的なギャラリースペースで、地上と地下にそれぞれ自分だけのコレクションを展示して楽しんでいる。

彼らは、ロンドンを拠点とする建築家ジョナサン・クラーク氏と、同氏の建築事務所ガレージ・デラックス(Garage Deluxe)の顧客である。同氏は4年前、クルマと建築への情熱を融合させ、この事業を立ち上げた。

「子供の頃に父とアールズコート・モーターショーに行って以来、クルマに興味がありました。現在、普段乗っているポルシェ・マカンポルシェ911 4Sカブリオレに加えて、アルファ・ロメオ・スパイダー3.2とフェラーリ575スーパーアメリカも所有しています。わたしはクルマが好きですし、他の人々がクルマを好きになる気持ちも理解しています」とクラーク氏は説明する。

クラーク氏は建築関係の仕事で生計を立ててきた。キャリアの初期には、ローズ・クリケット・グラウンドのメディアセンターやナショナル・ポートレート・ギャラリーの拡張工事などの大規模プロジェクトに携わっていた。

しかし、動物福祉センターの設計の仕事をきっかけに、専門分野に特化することのメリットに気付いた。

「バー、レストラン、学校、オフィスなど、あらゆるものを設計してきました。しかし、動物センターの設計で、ニッチなプロジェクトに需要があることを知りました。わたしの理想とするニッチなプロジェクトはクルマ関係のものでしたが、すぐに高級ガレージのほとんどが単発のプロジェクトであることに気付きました。そこで、その設計に特化することを決めたのです」

新事業を立ち上げた当初は、クルマや関連グッズのコレクター、家具デザイナー、リフトやターンテーブル業界など、自身のアイデアを実現する手助けをしてくれる人々と会うことに時間を費やした。

しかし、顧客との面会はそう簡単ではなかった。「当社のクライアントは、レーダーに引っかからない人々です。当社が彼らを見つけるのではなく、彼らが当社を見つけ、そうして見つけてもらった後は、完全な秘密厳守を求められます」

彼らのコレクションの価値を考えれば、それも当然のことである。クルマの価値が今ほど高くなかった時代には、古い納屋やガレージに保管しても問題はなかった。しかし、今では価値がはるかに高くなっているため、裕福なオーナーは適切な保管場所と安全な展示スペースを強く望んでいる。

「もしモネの絵画を所有しているなら、寒くてジメジメした部屋に飾ったりはしないでしょう。人目に触れ、安全な場所に保管したいはずです」とクラーク氏は言う。

「貴重なクラシックカーやスーパーカーも同じです。安全な遠隔地に保管することもできますが、それでは意味がありません。すぐに見ることも楽しむこともできず、友人にも見せられません」

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョン・エバンス

    John Evans

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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