ハイエンドな超高級ガレージの世界 愛車を保管・展示する秘密のスペース

公開 : 2025.01.09 06:25

ただクルマを並べるだけではない

現在、クラーク氏は6つのプロジェクトを監督しており、さらに2つのプロジェクトが計画中である。同社が英国で手がけた2つのプロジェクトのうち1つは地下にあり、最大100台のクルマを収容できる。

サウジアラビアのジッダにある別の地下プロジェクトでは、50台分の駐車スペースがある。ただし、顧客にとって重要なのは収容可能台数ではなく、クルマの展示方法や展示環境である。

この隠れ家的な地下室には、クルマを昇降するリフトを使ってアクセスする。
この隠れ家的な地下室には、クルマを昇降するリフトを使ってアクセスする。

クラーク氏は次のように語る。「わたしはこれまで、テーブルと椅子が置かれたシンプルなスペースにクルマが展示されているコレクションを数多く見てきました。まるでショールームのようです。当社のプロジェクトの1つでは、クライアントがバーとダイニングルームを備えた広いエリアに入り、ターンテーブルに置かれた2台のクルマを眺める。残りのコレクションはスライドスクリーンの向こうにある。クライアントが展示物を管理し、一定の間隔で中身を入れ替えるというアイデアです。つまり、ある週は赤いスポーツカー、別の週はスーパーカー、といった具合です」

スペインのギャラリースペースでは、顧客からシガーバーとゲームエリアのリクエストがあった。「まるで秘密の紳士クラブのようです。当社はコンクリートにソフトレザーを貼った素材を使用しているので、クルマを移動させても傷つけることがありません」

アブダビで手掛けたプロジェクトは、メルセデス・ベンツ300SLの整備とレースを行う会社のワークショップであった。機械、ボディショップ、塗装ベイに加えて、顧客エリアも設置される予定だ。

「UAEではクラシックカーが大変な人気です。最新のスーパーカーに乗っていても、ほとんどの人は気づきませんが、人気のある古いクラシックカーに乗っていれば注目されます」

個人顧客にとっては、クラーク氏の作品は単なるガレージ以上のものだ。「当社のスペースは、クルマのためだけでなく、来客をもてなしたり、リラックスしたりする場所でもあります」

「当社は自動車関連グッズやデザインの業界に多くの人脈を持っており、依頼されたものはほぼ何でも提供することができます。あるクライアントは、所有するフェラーリ・デイトナのシートとまったく同じ椅子を希望しました。また、別のクライアントは、自らのポルシェのエンジン(故障したもの)を壁の装飾として使用しました」

どんな依頼にも応える

ニューキャッスルでインテリアデザインを手がけるデザイン・ノース(Design_North)も、高級ガレージの世界で活躍する英国企業である。同社のディレクターであるスコット・スチュワート氏はクルマ愛好家で、あるとき、ハイパーカーをコレクションしている顧客のためにガレージのインテリアをデザインすることになった。その仕事がきっかけとなり、高級ガレージブランドの創設を思い立った。

「ハイパーケイブ(Hypercave)という商品名に決めたのは、誰もが知るブランドになることを目指しているからです」とスチュワート氏は説明する。同氏はいくつかのデザインコンセプトを作成し、インスタグラムに投稿して反応を待った。

LED照明は敷地内で発電された再生可能エネルギーで点灯し、ポルシェを照らす。その横にはエンターテイメントエリアがある。
LED照明は敷地内で発電された再生可能エネルギーで点灯し、ポルシェを照らす。その横にはエンターテイメントエリアがある。

「すぐに最初の依頼が舞い込みました。当社では『ハイパーケイブ01』と呼んでいます。すべてに番号が付けられるのです。依頼主は英国に拠点を置き、再生可能エネルギーの発電所を運営しています。当然ながら、EVに興味があり、所有する建物の一部をハイパーケイブに改装し、テスラ・サイバートラックとテスラ・ロードスターを停める場所にしたいと依頼してきました。SF映画『トロン』にインスパイアされた近未来的な空間で、テスラのパワーウォールに蓄えられた再生可能エネルギーを使用して、とても明るく照らされています。ユニバーサル・ピクチャーズはその画像を見て、この空間での撮影に興味を示しています」

同じ顧客が、ランドローバーディフェンダーのコレクション用にハイパーケイブ02を依頼した。車両のイメージに合わせて、この空間では自然素材を使用し、森の樹冠のように暗く、派手さは抑えられている。

どちらの “ガレージ” にも、目立つハイパーケイブのロゴが掲げられている。スチュワート氏は、さらに野心的な3つの新プロジェクトに力を入れている。2つはドバイの地下、もう1つはジッダである。

スチュワート氏とクラーク氏の高級ガレージは、決して安くはないが、保管されるクルマも安くはない。新しいガレージでは、間違いなく美しく映えるだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョン・エバンス

    John Evans

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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