【第4回】森口将之の『もびり亭』にようこそ:2024年問題を2025年に考える

公開 : 2025.01.08 20:20  更新 : 2025.01.08 20:20

モビリティジャーナリストの森口将之が、モビリティの今と未来を語るこのブログ。第4回は、物流業界が抱える問題について。2024年問題と騒がれたそれは、年が明けても続きます。解決への糸口は、消費者の意識改革かも。

改めて物流の2024年問題を考える

あけましておめでとうございます。本年も『もびり亭』をよろしくお願いいたします。

さて、日本の新年と言えば、初詣、おせち料理、年賀状などの慣習がお馴染みです。僕も例年どおり、この3つを体験しながら過ごしたのですが、その中で年賀状については、ある変化がありました。

年賀状離れが進む中、日本郵便は地域により、年賀郵便専門の配達体制をやめて通常郵便との一本化を図っている。
年賀状離れが進む中、日本郵便は地域により、年賀郵便専門の配達体制をやめて通常郵便との一本化を図っている。    森口将之

昨年秋に郵便料金の変更があり、葉書は63円から一挙に85円に値上げされたことは知っていましたが、元日の朝に年賀状が届いていないとは思いませんでした。

気になってSNSをチェックしてみると、今年から年賀状のためだけの配達は止めて、通常の配達の中で行う地域が多くなったという書き込みがいくつもありました。

値上げを機に、『年賀状じまい』をした人も多いでしょう。僕はやりとりのある方には続けていこうと思っていましたが、配達の特別扱いが終わったことを知って、考えが揺らぎつつあります。

とはいえ、最近ひんぱんに目にしてきた物流危機のひとつの表れだと考えれば、納得できることでもあります。

昨年まで、いわゆる『物流の2024年問題』というフレーズがメディアを賑わせました。僕もこの言い回しを何度か記事で使いましたが、それは伝えやすいからという理由であって、好ましくない言葉だと思っています。

何よりも気になるのは、誰が悪いのかを言わない、曖昧なフレーズであることです。本来は送料無料や翌日配達を望む消費者、必要な荷物だけをすぐに持ってくるよう依頼する荷主が原因だと思いますが、この言い回しによって、トラックドライバーの待遇改善が悪いのではないかという、とんでもない主張まで出てきています。

2025年も続く2024年問題

もうひとつの懸念は、2024年限定の問題だと認識され、今後忘れられてしまうことです。実際は今年の年賀状でもわかるように、問題は続いているのですが、今年はそれとは別に、『2025年問題』も控えています。

団塊世代の全員が後期高齢者になることで、介護の人手不足が深刻化する年を意味しており、かなり前から指摘されてきました。なので物流の問題は、以前ほど騒がれなくなりそうな予感がします。

物流の効率化や、自動運転の導入など、人手不足への対策は図られているが、根本的な解決には程遠い。
物流の効率化や、自動運転の導入など、人手不足への対策は図られているが、根本的な解決には程遠い。    森口将之

トラック業界が問題解決のために、何もしてこなかったわけではありません。たとえば大手ビールメーカー4社では、異なる会社のビールをひとつのコンテナに詰め込み、鉄道貨物も活用することで、トラックドライバーの負担を減らすなどの取り組みを、かなり前から進めてきました。

デジタル技術を活用したトラックバース(トラックを倉庫に接続して荷物の積み下ろしをする場所)予約や物流マッチングなどのサービスも、ベンチャーが開発したシステムを大手企業が採用するなどして、少しずつ浸透してきているようです。

さらに自動運転についても、少し前の記事で紹介したように、国土交通省の主導で新東名高速道路などでの実証実験が始まっており、2026年度からまず有人での自動運転トラックを導入し、2030年度に東京~大阪間で無人による自動運転トラックの運行を始めたいとしています。

でもこれらが機能すれば一件落着になるとは、とても思えません。ドライバー不足は今後さらに加速していくはずで、消費者や荷主の意識が変わらない限り、ますます厳しい状況になっていくような気がします。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    森口将之

    Masayuki Moriguchi

    1962年生まれ。早稲田大学卒業後、自動車雑誌編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。フランス車、スモールカー、SUVなどを得意とするが、ヒストリックカーから近未来の自動運転車まで幅広い分野を手がける。自動車のみならず道路、公共交通、まちづくりも積極的に取材しMaaSにも精通。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「MaaSで地方が変わる」(学芸出版社)など。

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