【第4回】森口将之の『もびり亭』にようこそ:2024年問題を2025年に考える

公開 : 2025.01.08 20:20  更新 : 2025.01.08 20:20

物流問題改善の鍵は適正価格

解決のヒントになりそうなのが、最初に取り上げた年賀状です。日本郵便によると、今年の元日に配達された年賀郵便物は、前の年に比べて34%も減ったそうです。料金値上げが影響したことは確実ですが、値上げ幅も35%ぐらいなので、結果的には人手不足の対策として効果的だったことになります。

そもそも物流の2024年問題が出てきたきっかけは、ドライバーの待遇改善です。であればハガキのように思い切って送料を上げ、その一部をドライバーに還元するというのが、まっとうな対策ではないでしょうか。

不当に安い送料が一般化したことがドライバーの待遇悪化の一因であるなら、逆に送料を上げることが改善につながるのではないだろうか。
不当に安い送料が一般化したことがドライバーの待遇悪化の一因であるなら、逆に送料を上げることが改善につながるのではないだろうか。    森口将之

その点でいけば、もっとも良くないのは『送料無料』という売り文句です。商品を運ぶドライバーにとっては、自分たちの仕事がタダと言われているようなものです。自分の仕事に金銭的な価値がないと言われて、気分が良いという人はいないはずです。

値下げをした結果が、悪い結果を及ぼしたこともあります。モビリティ分野で思い出すのは、かつてのツアーバスです。ツアー会社がバス会社に無理な条件の仕事を押し付けた結果、多くの死者を出す事故が起こってしまいました。

もちろんこれはネットショッピングをする消費者だけでなく、メーカーなどの荷主にも言えることです。送料を上げることで、物流の量は減るかもしれないが、質は上がるはず。それが結果的には安全快適な物流につながるのではないでしょうか。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    森口将之

    Masayuki Moriguchi

    1962年生まれ。早稲田大学卒業後、自動車雑誌編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。フランス車、スモールカー、SUVなどを得意とするが、ヒストリックカーから近未来の自動運転車まで幅広い分野を手がける。自動車のみならず道路、公共交通、まちづくりも積極的に取材しMaaSにも精通。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「MaaSで地方が変わる」(学芸出版社)など。

森口将之の「もびり亭」にようこその前後関係

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