【ワーストシナリオも提示】自工会『ビジョン2035』に込めた強い想い。日本自動車産業界は正念場

公開 : 2025.01.09 12:55

ワーストシナリオとは?

課題として大きく2つあり、それぞれで『ワーストシナリオ』を明記した。

1つ目は『インフラ・デジタル分野』の課題。

『自工会ビジョン2035』の表紙。
『自工会ビジョン2035』の表紙。    日本自動車工業会

充電ステーション整備、カーボンニュートラルや資源循環経済に向けた地域社会、行政の連携、中国の新興企業の驚異的な開発スピードへの対抗など、各種の課題がある。これらに対応できない場合のワーストシナリオは、『海外との電動車競争に敗北』、『ソフトウェア領域での競争力獲得に失敗』と想定した。

2つ目の課題は、『サプライチェーン・グローバル』とした。

半導体、レアメタルなどの安定調達。国土が狭いことで再エネ電源整備が不利。アメリカ、中国、欧州での保護主義的政策などとなる。そしてワーストシナリオは、『価格競争力低下・生産困難』、『海外市場での競争環境悪化』、『カーボンフットプリント等規制対応めぐり特定の市場から退出』が考えられるとした。

こうしたワーストシナリオは、自工会では過去に類のない極めて強烈なメッセージだ。言い換えれば、『現状把握を徹底』している。そうならないために、自動車産業界のみならず、社会全体での総括的な対応を議論するべき時期だということだ。

ただし、私見としては『産業としての勝った・負けた』という動機付けだけでは、人としてなんだか寂しいと思う。人としてどう生きたい、どんな社会で暮らしたい、そしてどんな国になってほしい。そんな、人としての原点に立ち返って、日本の未来を考えることが、結果的に自動車(モビリティ)産業やその周辺産業の国際競争力強化につながっていくのではないだろうか。

賀詞交歓会で各方面の方と意見交換しながら、そう感じた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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