最後の内燃エンジン・ジャガーに乗って思う、新時代への期待【新米編集長コラム#14】

公開 : 2025.01.12 11:45

AUTOCAR JAPAN編集長ヒライによる、新米編集長コラムです。編集部のこと、その時思ったことなどを、わりとストレートに語ります。2025年第一弾となる第14回は、最後の内燃エンジン・ジャガーとなる、Fタイプ・クーペがテーマです。

偶然にも最後のメディア向け貸し出し

年末年始をジャガーFタイプ・クーペと共に過ごした。ご存知のようにジャガーは大変革期にある。昨年12月には『タイプ00』と呼ばれる高級EVのコンセプトカーが登場し、コンセプトとはいえ、その個性的すぎるスタイリングやプロモーションは物議を醸した。これまでのジャガー好きには、受け入れるのに時間がかかりそうな内容だからだ。

私はイタリア車やフランス車のイメージが強いようで、事実このコラムで登場する車種もその傾向にあるが、21世紀のジャガーは好んで記事を作ってきた。特に2003年にXJがオールアルミボディで登場した以降は、XF、XKも含めて、感銘を受けたことが何度もあった。

年末年始を共に過ごした『ジャガーFタイプ・クーペZPエディション』。
年末年始を共に過ごした『ジャガーFタイプ・クーペZPエディション』。    平井大介

何といっても、クルマが軽い。サルーンもクーペも見た目よりずっとスポーティで、しかしラグジュアリーな世界観はちゃんと持ち合わせており、実際にオーナーとなることはなかったが、チァンスを伺いつつ人に強く勧めてきた。実は昨年、XEの強烈に素晴らしい中古車をタッチの差で買い逃したことがあり、今でも後悔しているほどだ。

そんな変革期前のジャガー新車販売は、ここ日本でも在庫限りとなっており、2025年は輸入元も新車のプロモーション活動を行わない。それはイコール、広報車と呼ばれる取材車両も退役となるわけで、なんと、今回のFタイプ貸し出しが最後のメディア向け貸し出しになるという。最後の内燃エンジン・ジャガーに乗っておきたいとお願いした次第だが、偶然にもAUTOCAR JAPANの取材が最後になるなんて、UKを発祥とする当編集部らしい話となった。

ほぼひと目惚れに近い第一印象

お借りしたのは『ジャガーFタイプ・クーペZPエディション』。一昨年10月に発表された世界限定150台の生産最終年限定車で、UKにはコンバーチブルもあるが、日本はクーペのみ12台が導入された。

SVビスポークのパーソナライゼーション・エキスパートが厳選したという内外装は、オワルトンブルーグロスペイントと、マーズレッドとエボニーのデュアルトーンの組み合わせ。ボディカラーは1961年にレース初勝利をあげたEタイプ・プロジェクトZPを想起させるものだという。ゼッケンサークルやフロントグリルのホワイトがいい味を出している。

内外装は、オワルトンブルーグロスペイントと、マーズレッドとエボニーのデュアルトーンの組み合わせ。
内外装は、オワルトンブルーグロスペイントと、マーズレッドとエボニーのデュアルトーンの組み合わせ。    平井大介

その組み合わせは、さすがはエキスパートのセレクト。ほぼひと目惚れに近い第一印象で、エンブレム類がブラックなのも、実にセンスがいい。個人的には細目のヘッドライトとなる後期型デザインが大人っぽくて好みであり、期間中、自宅横にある駐車場を窓から眺めるたびに、いい色だなぁと感心していた。

今回驚いたのは想像以上に、座った瞬間『しっくりきた』ことだ。目線の高さ、コックピットのタイトさ、ステアリングやシフトノブとの距離感、そしてガラスルーフによる開放感。最近、EVに代表される過剰なデジタル感に食傷気味で(新しいもの好きでもあるので、それはそれでいいとは思っているが)、そのオーソドックスさに安心感を覚えたのだ。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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