最後の内燃エンジン・ジャガーに乗って思う、新時代への期待【新米編集長コラム#14】

公開 : 2025.01.12 11:45

サウンドは100年の恋に落ちるほどのレベル

それは乗り味にも現れていた。車重は1840kgあるものの(車検証上の総重量は1950kg)、575ps/700Nmを発揮する5LのV型8気筒スーパーチャージャー『内燃エンジン』との組み合わせで、重さは微塵も感じさせない。かといってちゃんと剛性感や落ち着いた雰囲気もあって、その世界観はかつて感銘を受けたXKやXFの延長線上にあり、熟成感も半端ないではないか。足まわりも適度な硬さで、街中で少し突き上げがあっても不快に感じたことはなかった。

個人的にはジャガーに限らずアルミボディやフレームのたわむ感じが好きで、硬いけど柔らかい、柔らかいけど硬いフィーリングはこのFタイプからも伝わってきた。アクセルを踏み込んだ時の安心感がある軽快さはまさに白眉で、ダイナミックモードでV8を炸裂させた(=バルブが開いた)時のサウンドは、100年の恋に落ちるほどのレベルだ。一昨年7月にV8エンジンサウンドを録音して大英図書館に保存(!)という話があったが、それも十分に納得できる。

最後の『内燃エンジン・ジャガー』は、お世辞も掛け値もなしで、最高の1台だった。
最後の『内燃エンジン・ジャガー』は、お世辞も掛け値もなしで、最高の1台だった。    平井大介

FRのようなフィーリングながらAWDなのでフロントには安定感がある……など、とにかく全てが素晴らしく、高速道路を走りながらこれは永遠に走っていられると思ったほど。燃費だって高速を流しているだけなら9.0km/Lを超えるので、それほど悪くない。長距離移動の快適さは柔らかいシートや足まわりが全てではないことを、Fタイプは教えてくれる。

ZPエディションは2363万円というプライスタグで、「そりゃいいはずだ……」と膝を叩き、以後は中古車サイトを探索する毎日ではあるが、それだけの価値は十二分にあると思える。

Fタイプ・クーペZPエディションという最後の『内燃エンジン・ジャガー』は、お世辞も掛け値もなしで、最高の1台だ。これが作れるのだから、間もなくやってくるジャガー新時代も期待できるのではないか。そう感じた年末年始であった。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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