「業界初の試み」 高級車シートにリサイクル素材、まもなく試験生産へ

公開 : 2025.01.16 06:25

JLRが自動車用シートのポリウレタンフォームのリサイクルに成功した。次の新車のシートに再利用できる。「循環型」生産プロセスの確立を目指し、プロトタイプによる試験生産を行う予定だ。

次世代モデルへ「循環型シート」採用

リサイクルは自動車メーカーにとって優先度の高い課題であり、そのための画期的な取り組みが続けられている。例えば、JLR(ジャガーランドローバー)は最近、ポリウレタン製シートフォームのリサイクルに成功し、新たなシートの生産に再利用できるようになった。

来年早々には、この素材が量産前のプロトタイプで試験的に使用される予定である。JLRは、これは自動車業界初の試みであると主張している。

JLRは使用済み車両から回収したポリウレタンフォームのリサイクルに成功した。
JLRは使用済み車両から回収したポリウレタンフォームのリサイクルに成功した。    JLR

リサイクルに関しては、JLRは決して後発の企業ではない。同社は製造パートナー企業とともに、10年以上も前からプレス工場でアルミニウムスクラップの全面的なリサイクルを実施している。

また、2011年の初代レンジローバー・イヴォークには、合計16kgのリサイクル樹脂が使われている。

これらの素材はヘッドライナー、シートカバー、センターコンソール、フェンダーライナーの他、さまざまな部品に使用され、さらに、コットンやボール紙などの高品質な再生可能素材が21kg使用された。

ポリウレタンフォームのリサイクルは比較的難易度の高い課題であったが、JLR、ダウ・モビリティ・サイエンス、自動車用シートメーカーのアディエントの3社が協力した結果、実現した。

英国ゲイドンに拠点を置くJLRサーキュラリティ・ラボでの継続的な研究が重要な役割を果たした。すべてをリサイクルするという考え方は魅力的だが、特に混合素材が関わる場合には必ずしも実現可能ではない。

効果的に分離させることが難しい場合もあり、そもそも分離できないケースもある。一部のリサイクル樹脂は元の用途には戻されず、内装の「クラスA」仕上げに使用される素材は粉砕され、トランクのカーペットなどにリサイクルされる可能性がある。

JLRサーキュラリティ・ラボでは、さまざまな素材を同じ品質レベルで供給できるかどうかを評価するために、車両開発プロセスの初期段階でデータフィードを行っている。

その一例が、樹脂バンパーの化学成分の見直しである。研究チームは、より少ないポリマーで同等の品質を実現できることを発見した。

JLRはこの方法により、25万台の車両を生産する1つのモデルラインで、1万7500kg相当のCO2を削減でき、56万ポンド(約1億円)のコスト削減につながると試算している。

フル生産となると、リサイクルフォームを使った「循環型シート」と呼ばれるシートでは、シート1個あたり44kgのCO2削減が期待されている。

ポリウレタンは一般的にクルマの内装に広く使用されている。おそらく、レザーに代わる代替素材への需要の高まりにより、現在ではさらに広く使用されているだろう。

フォーム(発泡剤)ではないが、その多くは古くから馴染みあるポリウレタンをベースとしている。

アルカンターラのような本物のレザーと間違われそうな高級仕上げ材は、68%がポリエステル、32%がポリウレタンでできている。

記事に関わった人々

  • ジェシ・クロス

    Jesse Crosse

    英国編集部テクニカル・ディレクター
  • 林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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