ポルシェ911GT3 vs ケイマンGTS vs 911カレラGTS
公開 : 2015.02.10 23:50 更新 : 2017.05.29 19:32
昨年のドライバーズカー選手権で見事3位を飾った911GT3と4位のケイマンGTS。GT3の場合は、並外れたパフォーマンスの発揮に的を絞り、またGTSの方は日常における扱いやすさも維持しながら、それぞれ ’最高’ を目指して開発されている。
それぞれが、それぞれの名声をほしいままにしていた矢先に、911GTSなる新たな刺客が舞い込んできた。それも同じメーカーから、である。はたして911GTSは、これら2台に対してどのように力を発揮するのか。ブレコン・ビーコンズの峠道に連れだしてみることにしよう。
第一。911GT3がデビューした直後(未だにそうかもしれないけれど)、ポルシェ・フリークたちは口をそろえてマニュアル・トランスミッションを採用しなかったことに不満を述べた。これに対して、911GTSには専用チューンが施されたマニュアルの設定がある。
そして第二。911GTSはGT3よりも5kg軽量であること。GT3だって十分に軽いのだが、ことクラブ・スポーツになれば、複雑なシャシー構造やロールケージ、PDKギアボックスのおかげで、いくらパネルを軽くし、鍛造ホイールを履こうともその軽さは相殺されてしまう。
ユーザビリティに関していえば、911GTSの方が圧倒的にたかい。もちろんGT3も、1世代前の ’超’ 硬派なものに比べると快適性は増しているものの、やはりこれに関してはGTSの方が快適である。
そのうえGTSは996型のGT3よりも速くなっている。そうでありながら、快適性が損なわれていないという点が、911ブラザーズのランク付けを難しいものにしているのだ。
カレラS用のエンジンに ’パワー・キット’ を充てがい、カレラ4やGT3と同じワイド・ボディとアクスルを採用、さらには10mmの車高低下に加え、PASMアダプティブ・サスペンション・システムを導入したとくれば、GTSは決して侮れる存在ではないことがわかる。
それだけに終わらず、スポーツ・エグゾーストやダイナミック・エンジン・マウント、トルク・ベクトリング、LSDなど、911のオプションの中でマスト・バイな項目は、標準装備として完璧に網羅している。GTSこそ勝者にも成り得るのである。
ウェールズ西部に位置するカーマーゼンシャーの駐車場で3台を眺めていると、やはり真っ先に目を引くのはGT3。大きく口を開いたエア・ダクトや、物々しいカーボン・セラミック製ブレーキ、神社の鳥居のようなリア・ウイングは只者ではない雰囲気を醸し出している。
これに比べるとGTSは、やや控えめな印象。明確に ”究極のパフォーマンス・カーここにあり!” と主張するGT3に対して、GTSはあくまで控えめであることに徹する印象だ。GT3との価格差は、ここに表れているとみることもできる。
ご存知の方も多いかもしれないが、911GT3は今となっては新車で購入することはできない。つまり、991世代初のパフォーマンスに特化した911は、既にソールド・アウトとなっているモデルだ。さらなるパフォーマンス・モデルを期待するならば、より高価なGT3 RSを待つ他ない。
GT3の話に戻ろう。
このクルマが組み合わせる3.8ℓのフラット・シックスの出来栄えは、エンジン界の覇者と呼ぶにふさわしい。鍛造のアルミニウムとチタニウムを用いるインターナルやロッカー・アーム式バルブ・トレインを用いるヘッド部分は突き抜けるような回転感を紡ぎだしている。
もちろんこれにより多量のオイルを消費することになるけれど、これに関してはメーターで礼儀正しく教えてくれるので心配することはない。