911 ダカールのフォード流解釈 マスタング・マッハE ラリーへ試乗 車高と一緒に楽しさプラス

公開 : 2025.01.28 19:05

車高を上げてオールシーズン・タイヤを履いた、電動クロスオーバーのマスタング・マッハE ラリー 911 ダカールやウラカン・ステラートに対するフォード流解釈 英編集部が評価

911 ダカールやウラカン・ステラートのフォード流解釈

カプリを電動クロスオーバーで復活させ、ハッチバックのフィエスタを終了させたフォードだが、センスのある自動車メーカーだという特長は変わらない。でなければ、V8エンジンのマスタングや、過激なピックアップ、レンジャー・ラプターを擁しないはず。

そして新たに、ユーモアたっぷりのマスタング・マッハE ラリーが登場した。ポルシェ911 ダカールや、ランボルギーニ・ウラカン・ステラートに対する、フォードのバッテリーEVによる解釈だと捉えて良さそうだ。

フォード・マスタング・マッハE ラリー(英国仕様)
フォード・マスタング・マッハE ラリー(英国仕様)

悪路の走破性を高めるため、サスペンションは20mmアップ。磁性流体を用いたダンパーは、プログラミングし直されている。駆動用モーターは2基載り、総合での最高出力は486ps。ベースになったのは、マスタング・マッハE GTだ。

足元を飾るのは、1インチ小さいホワイトのホイール。サイドウォールの高い、オールシーズン・タイヤが履かされている。シャシー底面にはスキッドプレートが追加され、駆動系が保護される。

ドライブモードには、ラリースポーツを追加。スタビリティ・コントロールの制御が緩くなり、アクセルレスポンスが線形的になる。グリップが充分に効かない路面で、より滑沢にボディを振り回すために。

ボディには、フォード・フォーカス RSとイメージを共有するスポイラーを装備。ブラックのストライプやサイドのロゴが、ラリーカーっぽさを強めている。

乗り心地は大幅に改善 積極的なコーナリング

メニューとしては、911 ダカールやウラカン・ステラートほどシリアスではない。しかし、フォードのファミリークロスオーバーとして、そんな必要はない。むしろ、2250ポンド(約44万円)という現実的なオプションなことがうれしい。

バッテリーEVを楽しむ、新たなスタイルとして歓迎できる。ただし、英国や日本の場合、舗装されていない公道を見つけるのは少し難しい。結果として、オンロードでの性能も重要になる。

フォード・マスタング・マッハE ラリー(英国仕様)
フォード・マスタング・マッハE ラリー(英国仕様)

ベースとなったマスタング・マッハE GTは、路面の凹凸を吸収しきれず衝撃が伝わり、落ち着いた乗り心地とはいえなかった。だがラリーでは、その悩みは大幅に改善された。高性能なモデルとして、充分理解できる範囲に。

ストロークの伸ばされたサスペンションと、肉厚なタイヤの効果といえる。見た目だけの「ラリー」ではない。

路面が濡れ冷えたカーブへ積極的に侵入でき、意欲的に脱出できる。ラリースポーツ・モードは、僅かだが、従来よりリニアな反応を得ている。

それでも、ドライバーズカーとして完璧になった、とはいえないだろう。ブレーキペダルは遊びが大きい。踏み込んでいくと、突然制動力が効き始める印象がある。

ステアリングも、穏やかなドライブモード時は極めて軽いものの、ラリースポーツ・モード時は重すぎる。フォード車特有の、バネが効いたような手応えは好ましいが、フィードバックは余り伝わってこない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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