JAIA試乗会

公開 : 2015.02.12 23:30  更新 : 2022.12.12 21:30

  • シトロエンC3セダクション

  • プジョー208シエロ

  • フォルクスワーゲン・ゴルフR

  • BMW i3 レンジ・エクステンダー

シトロエンC3セダクション / プジョー208シエロ

シトロエンとプジョー、どこがどう違うのか? 学術的興味からPSAのベーシック・カー2台を同じ枠で借り出した。C3は走り出した途端、トロトロ、フワフワの乗り心地で、いいなぁ、と思った。低速でちょっと荒れた道を走ると、ゴトゴト揺れながら通過して行く。やっぱりシトロエンはこうではなくては! そのあと208に乗り換えると、C3より足回りが適度に締まっていて、終始ボディがフラットに保たれる。これはこれで、いいなぁ、と思う。それから、208で西湘バイパスの二宮IC〜大磯港IC間を往復する。PSA自慢の1.2ℓ直3“PureTech”は回すとうるさい。ややザラついてもいる。シングル・クラッチのロボタイズド・ギアである5速ETGを積極的にダウンシフトすると、85psの非力なエンジンを唸らせて一所懸命に走る。それからC3でも往復してみる。う〜ん、違いがよくわからなくなった。ある程度の速度で巡航すると、C3も乗り心地がフラットになってきて、208と同じ直3を同じ音質で唸らせながら走る。どちらも一所懸命な感じが愛おしい。結論→この2台、あまり変わらない。ぜんぜん参考にならなくてすいません。そうなると、あとは見た目のお好みで、となるわけだけれど、それぞれに魅力的でどちらかとは決めがたい。ただ、208の5ドアの一番安いのは2,275,000円なので、プジョーのほうが値づけが高いことになる。お買い得なのはC3だ。

シトロエンC3セダクション

価格 2,142,000円
燃費 19.0km/ℓ
CO2排出量 NA
乾燥重量 1140kg
エンジン 直列3気筒1199cc
最高出力 82ps/5750rpm
最大トルク 12.0kg-m/2750rpm
ギアボックス オートマチックモード5速ETG

プジョー208シエロ

価格 2,530,000円
燃費 19.4km/ℓ
CO2排出量 NA
乾燥重量 1110kg
エンジン 直列3気筒1199cc
最高出力 82ps/5750rpm
最大トルク 12.0kg-m/2750rpm
ギアボックス オートマチックモード5速ETG

フォルクスワーゲン・ゴルフR

「これは現実世界の高性能車設計のランドマークなのだ」とAUTOCARが激賞したゴルフR。”いま買えるクルマ ベスト50″ という特集で堂々の1位に輝いている(AUTOCAR JAPAN 2015年3月号参照)。日本市場には昨年2月に上陸。ゴルフⅦで世界を震撼させたVWの新プラットフォーム、MQBに、2ℓ直4ターボ+4WDという先代の基本を組み込んだ新世代のウルトラスーパー・ゴルフである。2ℓTSIエンジンはヘッドまわりを新設計して先代比プラス24psの280psを発生、ギアボックスは6速DSG、4WDは第5世代に進化した電子制御式で、場合によっては後輪に100%トルクを配分する。アンダーステアが出ないわけだ。280psの4WDだったら、インプとランエボという痛快なクルマがわがニッポンにもあったわけだけれど、なぜわが国にはもはやなくてドイツにはあるのか? ゴルフRはアイドリング・ストップやブレーキ・エネルギー回生システムなどを備え、エコ方面でのアピールも怠りない。ドライブ・モードはエコからレースまで6つの設定があり、レースを選ぶと、俄然ヴオンヴオン、音が割れたような排気音をまき散らす。アクセルを踏めば猛烈に速く、ちょっと緩めただけでヴォンッとダウンシフトする。可変ダンピングを備えた乗り心地は硬めながら、突き上げはない。ジャーマン・テクノロジーは過剰にスゴイ。そのとき富士山が見えた。日本一の山を見ながら、これは世界一のゴルフである、と思った。

フォルクスワーゲン・ゴルフR

価格 5,404,000円
燃費 14.4km/ℓ
CO2排出量 173g/km
乾燥重量 1500kg
エンジン 直列4気筒1984ccターボ
最高出力 280ps/5100-6500rpm
最大トルク 38.7kg-m/1800-5100rpm
ギアボックス 6速デュアル・クラッチ

BMW i3 レンジ・エクステンダー

2013年の初夏、正式発売前のi3をミュンヘンの某所でマジマジと見る機会に恵まれた。BMW iのデザインはフランス人が率いている。その斬新なウィンドウ・グラフィックを見るにつけ、フランス人はやっぱり革命的である、と思った。同じ年の秋、フランクフルト・ショウのBMW館で静かにグルグル走り回るi3を見た。近未来がそこにあった。極東で納車が始まったのは昨年春のことで、私もi3でお台場周辺を走った。日本が開発した大量生産型カーボン繊維を使って軽量化を図ったi3は、重い電池を積むEVなのに車重1390㎏とフツウの小型車並みに軽く、アクセル・ペダルを踏めばクイッと加速し、放せばブレーキをかけたみたいに減速する。それはテスラにも似ている。ステアリングはクイックで、電池を床に敷きつめているため、全高が1550㎜と背が高いのに重心が低く感じられるのも新しい。乗り心地は175/60R19という大八車の車輪みたいなサイズのエコ・タイヤが決定づけているに違いない。大八車のようにコツコツする。ともかく、i3はi-MiEVやリーフやテスラを体験していた私にも新しくてオモシロかった。あれから数カ月、今回久々に乗ってみると、意外や新しさを感じなかった。コンピューター・エイジの現代において革新は日常茶飯事である。i3はもはやフツウになった。時代と私自身の変化の速さにただただ驚くのみである。i3はいまどきのフツウの小型車として買いである。

BMW i3レンジ・エクステンダー

価格 5,460,000円
航続距離(参考値) 300km
CO2排出量 13g/km
乾燥重量 1390kg
レンジエクステンダー 直列2気筒
システム最高出力 170ps/5200rpm
最大トルク 25.5kg-m/100-4800rpm

記事に関わった人々

  • 今尾直樹

    Naoki Imao

    1960年岐阜県生まれ。幼少時、ウチにあったダイハツ・ミゼットのキャビンの真ん中、エンジンの上に跨って乗るのが好きだった。通った小学校の校長室には織田信長の肖像画が飾ってあった。信長はカッコいいと思った。小学5年生の秋の社会見学でトヨタの工場に行って、トヨタ車がいっぱい載っている下敷きをもらってうれしかった。工場のなかはガッチャンガッチャン、騒音と金属の匂いに満ちていて、自動車絶望工場だとは思わなかったけれど、たいへんだなぁ、とは思った。

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