スマート、完全EV化にブレーキ ハイブリッド車の導入決定 相次ぐ方針転換
公開 : 2025.01.27 06:25
吉利汽車とメルセデス・ベンツが所有するスマートは、完全EV化計画を一時撤回し、SUV「#5」でPHEV版の導入を決めた。ハイブリッドとレンジエクステンダーの人気が高い中国市場の動きに合わせる。
中国で加速するPHEV人気
スマートの新型SUV「#5(ハッシュタグ5)」は、グローバル市場での販売に懸念が高まったことを受け、以前に発表されたEV版に加えて、PHEV版が導入される予定である。
この動きは、中国を拠点とするスマートの関係者によって確認された。同社は吉利汽車とメルセデス・ベンツが共同所有しており、これまでEV専用ブランドとなることを宣言していたが、大幅な方針転換となる。

スマートの欧州事業担当者はAUTOCARの取材に対し、次のように語っている。
「当社は、エンジン、特にハイブリッド駆動によるパーソナルモビリティを、純粋なEVへの橋渡し的な技術と捉えている。ますます多様化する顧客の要望や要求に応えることが重要だ。現時点において、スマートは将来に向けた技術的ソリューションを排除することはできない」
スマート史上最大のモデルである#5にハイブリッド・パワートレインを搭載するという決定は、中国市場における販売動向の変化に対応したものだ。中国では最近、PHEVとレンジエクステンダー車の販売が好調である。
PHEV版の#5の技術的な詳細はまだ明らかになっていないが、ギャラクシー7 EM-iなど、最近発表された吉利汽車の新型車に見られるパワートレイン「トール(Thor)」の派生型が使用されると考えられている。
トールでは、ターボチャージャー付き1.5L 4気筒ガソリンエンジンと電子制御デュアル・ハイブリッド・トランスミッション(E-DHT)に、電気モーターを組み合わせたものだ。
ギャラクシー7 EM-iでは、このトールにおいて8.5kWhまたは19.1kWhのLFPバッテリーが選択できる。電気のみの航続距離は中国CLTCテストサイクルで前者が55km、後者が120kmとされている。
平均燃費は31.5km/l、最大1724kgの車両重量と19.1kWhのバッテリーを組み合わせた場合、総航続距離は1400kmとなる。
これと比較すると、#5のEV版は、シングルモーター仕様で最高出力340ps、デュアルモーター仕様で422psを発揮する。前者は400V、後者は800Vの電気アーキテクチャーを採用している。76kWhのLFPバッテリーと100kWhのリチウムイオンバッテリーが用意され、欧州WLTPに基づく航続距離は570~740kmである。
同様のハイブリッド・パワートレインは、ジーカー7Xにも搭載されている。
欧州市場への導入時期は定かではないが、#5のPHEV版は2026年発売に向けて準備が進められている模様だ。EV版は2025年半ばに発売される予定だ。
スマートの計画変更に先んじて、吉利汽車傘下のロータスもまた、完全EV化を断念すると発表したばかりである。
ロータスのフェン・チンフェンCEOは昨年11月の広州モーターショーで、ターボチャージャー付きエンジン、電気モーター、超急速充電を備えた、いわゆる「スーパーハイブリッド」技術を市販車に導入し、航続距離を最大1100kmにまで伸ばすと述べた。
一方、ジーカー(Zeekr)は2025年に3車種のPHEVを発売する計画だ。純粋なEVのみを販売するという当初の方針から、市場需要に合わせてパワートレインの多様化へと舵を切った。
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