まずは実際に使用してみた第一印象から

長期レポートとしてヒョンデ・アイオニック5が編集部にやってきたのは、昨年8月のことだった。その後、11月にアイオニック5がマイチェンを受けたことで、レポート車から退役。入れ替えでやってきたのが、同じヒョンデのコンパクトSUV『コナ』である。

長期レポート初回ではコナの概要をご紹介し、以後3回は、AUTOCAR JAPANではお馴染みのおふたりにステアリングを預け、レポートを寄稿頂いた。これが思いのほか興味深い内容となったので、今後も編集部のレポートと織り交ぜてお届けしようと思う。今回は私が実際に使用してみた第一印象をお伝えしたい。

アイオニック5からコナに乗り換え、システムを起動して最初に思ったのは、起動音の音質のよさであった（蛇足ながらエンジンは『始動』、BEVは『起動』と書くのがしっくりくる）。インパネ周辺をチェックすると、メーターディスプレイ右側に大きなBOSE製スピーカーが備わっており、なるほどと納得した。

室内は初回のレポートでも書いたとおり、物理スイッチが多くてわかりやすい印象。デジタルオンチでない自信はあるものの、全てをディスプレイ内に『デジタル収納』してしまう最近トレンドには抵抗があり、せめてエアコン類だけでも……と思っているので、コナのスイッチ類には好感を抱いた。

コナは『コンパクトSUV』と称されるものの室内は十分に広い印象で、ラゲッジスペースだったり、細かいところではカップホルダー周辺のスペースだったりと各部が余裕ある作りで、かなり実用的で使いやすい印象だ。

またこれはマイチェン版アイオニック5では解消されたが、旧レポート車のアイオニック5からコナに乗り換えると、センターディスプレイの操作系でホームボタンが備わること、ステアリングが2本ではなく3本スポークなのはありがたいと思った。

スタイリングに『カウンタック感』を抱く

改めてコナのスタイリングを観察すると、やはり、他の何にも似ていないのが素晴らしいと思う。

現在、ヒョンデのデザインチームを率いるルーク・ドンカーヴォルケ氏は、かつてランボルギーニ時代にムルシエラゴやガヤルドを担当していることもあり、コナを見ていると「クンタッチ！」と思わず叫びたくなる。

念のため書いておくと、日本ではスーパーカーブーム時代の名残で『カウンタック』と表記するが、イタリア語では『クンタッチ』のほうが元の発音に近く、これは驚いた時の感嘆符を表すものだ。意訳すれば「なんだこれは！」である。というわけでコナには、ムルシエラゴやガヤルドの先祖に通じる『カウンタック感』を抱かずにいられないのだ。

話が脱線した。最初に街中で乗った時の印象は、いい意味で普通のクルマというものだ。コナ自体は以前『Nライン』の試乗会で乗ったことがあり、パワーユニットや足まわりは同じだから、印象として特に違うことはない。前回のレポートで高桑秀典さんも指摘していたが、知らない人が同乗したら、BEVだと気がつかないだろう。それだけ、乗用車らしい自然なフィーリングなのである。

また、ステアリングのパドルで回生ブレーキの強さは0から3まで調整できて、3の先には1ペダル走行が可能となる『iペダル』も備わるのだが、最初は回生が0になっていたため、よりBEVっぽさが感じられなかったのも関係しているだろう。アクセルペダルに対する反応も、エコやノーマルモードだと瞬時に加速する過敏さはなく、スポーツモードでも加速が過激にならない塩梅も、個人的にはちょうどよく感じた。

さて、導入直後に早速、長距離取材のお供に使用したのだが……という話を、次回のレポートでお伝えしたい。

画像　長距離レポート車として活躍中のヒョンデ・コナ　全21枚