マクラーレンF1とはまったく異なる体験? 最新「T.50」の助手席へ同乗 GMAを訪問(2)

公開 : 2025.02.05 19:05

タイヤと手のひらの対話を重視

「信じられないほど乗りやすいですよ。どんな速度でも、(速度抑止用の)スピードバンプを通過できます。歩道の段差やカリフォルニアの急な坂、ナルド・テストコースでも、アゴを擦ったことはありません」。フランキッティが続ける。

足回りのしなやかさは、トラクションにも効果的だ。とはいえ、濡れた英国のアスファルトで、673psを受け止めるのは簡単ではない。「トラクションも、本当にイイです。ゴードンさんはアンチロールバーが好きではないので、リアには付いていません」

GMA T.50(英国仕様)
GMA T.50(英国仕様)    ブランドン・パウエル(Brandon Powell)

タイヤは、公道向きのミシュラン・パイロットスポーツ4Sを履く。しかも既製品。幅は控えめで、リア側でも295でしかない。購入しやすく、喜ばれるはず。

「最大の課題だった1つが、タイヤと手のひらを対話させること。それを掴めた時は、コレだっと思いました。グリップ力が高まるほど、タイヤが抜ける瞬間も唐突になるんですよね」

T.50にもパワーステアリングは備わるが、低域でのアシストが目的で、機能するのは10km/h以下だ。「レスポンシブさを出すために、クイックなステアリングラックを組む必要はありません」

「最近のクルマには、嫌なほどクイックすぎる例もありますよね。どれを指しているのか、ご想像できると思いますが」。彼が微笑む。

思い当たるそのクルマには、素晴らしいエンジンが搭載されている。T.50も同様だ。特別に開発されたV12エンジンの紹介が、柔軟性だけではもったいない。サウンドも素晴らしい。

マクラーレンF1とはまったく異なる体験?

「カーボンファイバー製のエアクリーナーボックスは、スロットル開度に応じて共鳴するよう設計されています。聞こえるノイズは、アクセルペダルの角度に応じています」

「唯一無二といえる吸気ノイズを備える、(6.1Lエンジンの)マクラーレンF1から、ゴードンさんが取り入れたことの1つです。排気量の小さいエンジンで、同様の効果を得るのは簡単ではありませんでしたが、すべてを理解し実現しました」

GMA T.50(英国仕様)
GMA T.50(英国仕様)    ブランドン・パウエル(Brandon Powell)

もう1つ感銘を受けたのが、全幅が1850mmと比較的狭く、公道でもコーナリングラインをある程度選べること。上から見たプロポーションは、マクラーレンF1にも近い。直接乗り比べてみたら、どんな違いを感じ取れるのだろう。

「シートポジションや哲学的な部分は近いかもしれませんが、運転体験はまったく違います。小さなものではありません」。フランキッティが答える。

「一生忘れられない思い出の1つが、T.50に乗るゴードンさんを、F1に乗る自分がワインディングで追走したこと。彼に離されないよう、全力で運転しました。最後に降りた時には、胸をなでおろしました。30年間の進歩を感じましたね」

このドライブは、フランキッティへT.50を購入したいと思わせた要因の1つになった。しかし、既にすべての納車先が決まっていたという。「プロトタイプを売ってくれるように、説得しています」。彼が笑う。

顧客への納車を、遅らせる訳にはいかない。GMA T33での過ちは、繰り返されずに済んだらしい。

撮影:ブランドン・パウエル(Brandon Powell)

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    役職:編集委員
    新型車を世界で最初に試乗するジャーナリストの1人。AUTOCARの主要な特集記事のライターであり、YouTubeチャンネルのメインパーソナリティでもある。1997年よりクルマに関する執筆や講演活動を行っており、自動車専門メディアの編集者を経て2005年にAUTOCARに移籍。あらゆる時代のクルマやエンジニアリングに関心を持ち、レーシングライセンスと、故障したクラシックカーやバイクをいくつか所有している。これまで運転した中で最高のクルマは、2009年式のフォード・フィエスタ・ゼテックS。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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