革新的な「薄型」インホイールモーター 大径ブレーキと併用可、EVやHVにも
公開 : 2025.01.28 18:05
スロベニアのモーター専門企業エラフェ(Elaphe)社が、高性能のインホイールモーターを発表した。エンジン車にも使用可能で、FRスポーツカーなどの性能を飛躍的に向上させる。2032年頃に実用化される見込み。
FR車などに最適? 量産車への搭載は2032年頃か
スロベニアの企業、エラフェ・プロパルジョン・テクノロジーズ(Elaphe Propulsion Technologies)社は、高性能ブレーキと互換性のある初のインホイール電気モーターを開発したと発表した。
新型の薄型電気モーター「ソニック1(Sonic 1)」は、最高出力272psと最大トルク102kg-mを発生し、21インチのホイールのリム内に搭載できる。EVとハイブリッド車の両方に使用できるという。

他のインホイールモーターとは異なり、薄型設計により最大400mm径のディスクブレーキを搭載できるスペースが確保されており、サーキットでの使用にも適している。ユニット1基につき、バネ下重量40kgの追加となる。
このエラフェ社の技術は、イタルデザインのクインテセンツァ(Quintessenza)というコンセプトカーでプレビューされた。ピックアップトラックを思わせるワイルドなスーパーカーで、4本の各車輪にソニック1を搭載し、合計出力は2000psを超えるという。
注目すべきは、ソニック1がエンジン車にも対応している点だ。特に高性能な後輪駆動スポーツカーに重点を置いており、前輪にモーターを追加することで、前面投影面積を増やすことなくフロントアクスルにパワーを供給できるようになる。
また、同社は独自のソフトウェアを開発している。その1つがトラクションコントロール・システムで、標準的な車両と比較して、反応速度を最大20倍に高速化するという。さらに、「振動音響」システムも開発し、インバーターを制御することで多様なサウンドプロファイルや触覚フィードバックを実現している。
エラフェ社の営業責任者であるルカ・アンブロジーク氏は、「継続的な性能密度の提供」に開発の焦点を当てていると述べた。また、「ソフトウェアが重要な要素だ。最も重要なのは、各車輪に供給される電力をどのように制御するかだ」とした。
モーターの位置を最終的に駆動する部品に近づけること、および車両の前部や後部に大型モーターをパッケージ化する必要性をなくすことによって、「車両をより合理的にする方法」を編み出したという。
アンブロジーク氏によると、増加したバネ下重量は「問題ではない」という。EVやハイブリッド車の総重量に占める割合はまだ低いからだ。
自動車メーカーへの納品は今年後半に開始される予定で、アンブロジーク氏によると、メーカーと交渉に入っているという。エラフェ社は、より一般的な乗用車向けに設計されたインホイールモーターの第2の製品ラインの開発も進めており、複数のメーカーと協議中だ。製品開発のライフサイクルを考慮すると、2032年頃から量産車に搭載される見込みである。
エラフェ社はインホイールモーター技術の開発を目的として2006年に設立され、過去1年6か月をソニック1の開発に費やしてきた。
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