先端の「クマ」も再現 ブガッティ・タイプ57 S コルシカ(2) 受賞多数のオープンボディ

公開 : 2025.02.15 17:46

レーシングシャシーに載ったコルシカの美しいオープンボディ 無敵感を覚えさせる加速力 購入直後にエンジンブロー 丁寧なレストアを経てコンクール・デレガンスで表彰 英編集部が逸話に迫る

半年での完成が求められたボディのレストア

ボディを外されたブガッティ・タイプ57 S コルシカのレーシングシャシーは、治具に固定。レストアを引き受けたティム・ダットン氏は、ドライブトレインから作業に取り掛かった。

エンジンブロックはボアが再処理され、クランクとコンロッド、ピストンは新調。古いクランクケースは修理し、カムには新しいプロファイルが与えられた。

ブガッティ・タイプ57 S コルシカ(1937年式/英国仕様)
ブガッティ・タイプ57 S コルシカ(1937年式/英国仕様)    オルガン・コーダル(Olgun Kordal)

3.3L直列8気筒エンジンは、計測台で142psを発揮することを確認。だが、ダットンはパワー以上に滑らかさを重視したという。

トランスミッションはリビルド。変速時に、2段ぶんのギアが選ばれてしまう問題も解決された。乗り心地と操縦性を高めるため、デラム社製のダンパーは、計測機械で入念に減衰力が調整された。

一方のボディは、シャシーとともにクラーク&カーター社の工房へ。スティーブ・クラーク氏がレストアしたブガッティは、過去にタイプ37しかなかったが、ペブルビーチ・コンクール・デレガンス出展に向けて、半年での完成が要求されたという。

ボディパネルを外したクラークは、コルシカ・コーチワークス社の仕事へ感動したと振り返る。「ボディの状態は良好でした。でも、ジョイント部分の接着剤が経年劣化で収縮し、緩くはなっていました」

「できるだけオリジナル状態を保つことが、とても重要だと考えました。ドアとボンネット、マッドガードはすべてオリジナルです。フロントフェンダーは、1945年にトラックがバックで衝突し、理想的な状態では直っていませんでしたが」

ラジエターキャップの先端に載るクマも再現

「ボディパネルやドアのチリには、こだわります。ボンネットとラジエターシェルのラインを一致させるのは、大変でしたね。ホイールアーチとタイヤとの隙間も、綺麗に揃えるよう、細かな調整を重ねています。時間をかけて、見た目を整えました」

ソフトトップの形状には、クラーク&カーター社の誰もが疑問を抱いたという。「古い乳母車の幌のように見えたんですよね。折りたたんだソフトトップがフラットになるように、リアシートの位置を下げています」

ブガッティ・タイプ57 S コルシカ(1937年式/英国仕様)
ブガッティ・タイプ57 S コルシカ(1937年式/英国仕様)    オルガン・コーダル(Olgun Kordal)

「ソフトトップのフレームも、再設計しました。閉じた時に滑らかに見えるように。オープンの状態が、最も見栄えすると思います」

インテリアを担当したのは、ロバート・スミス氏。「レザー部分には、エンボス加工のパターンが必要だったのですが、1つひとつ手作業で打ち込んでいます」

ボンネット側面には、初代オーナーのロバート・ロプナー氏が手描きでフラッグをあしらっていたが、それも再現。ナンバープレートなども含めて、細部まで徹底的な仕事が施されている。

ラジエターキャップの先端には、熊のマスコットが載っている。「これは、ロプナーさんの奥さん、ドロシーさんからのプレゼントでした。彼女は、夫をクマさんというあだ名で呼んでいたようです」。クラークが説明する。

「ロウで熊の形を掘り出し、洋白銀で鋳造して再現しています。工具箱で欠けていたのは、ミシュランのタイヤゲージだけ。インターネットを通じてフランスで発見し、手間取りましたが英国へ届けてもらいました」

記事に関わった人々

  • 執筆

    ミック・ウォルシュ

    Mick Walsh

    英国編集部ライター
  • 撮影

    オルガン・コーダル

    Olgun Kordal

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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