先端の「クマ」も再現 ブガッティ・タイプ57 S コルシカ(2) 受賞多数のオープンボディ

公開 : 2025.02.15 17:46

最も優雅なオープンカーとして受賞

ペブルビーチ・コンクール・デレガンスの会期は動かない。アメリカ・カリフォルニア州へ輸送する期日は、日に日に迫った。直前の1週間は、休みなく朝の7時から夜の8時まで作業を続けたと、クラークが振り返る。

「事前にテストする時間も、再調整する時間もありませんでした。コンクール・デレガンスのプレ・イベント、カリフォルニア・ハイウェイ1号線でのツアーは、ちょっとした悪夢になりましたよ」

ブガッティ・タイプ57 S コルシカ(1937年式/英国仕様)
ブガッティ・タイプ57 S コルシカ(1937年式/英国仕様)    オルガン・コーダル(Olgun Kordal)

「深い霧が立ち込めていて、気温は寒いほどでした。フルードが漏れていて、ブレーキは効きも悪かったんです」

直前に更に磨き込まれ、タイプ57 Sは緊張の審査へ。アストン マーティンのチーフ・クリエイティブ・オフィサー、マレク・ライヒマン氏は、ひたすらに美しいと、その仕上がりを絶賛した。

受賞車が次々に発表される中、英国からやって来たクラークたちは最後まで待つように促された。不安と期待が入り乱れる中、最も優雅なオープンカーへ贈られる、栄えあるジュール・ホイマン・モースト・エレガント・オープンカーの受賞が発表された。

3週間後、タイプ57 Sはグレートブリテン島南部、ブレナム宮殿で開催されたサロン・プリヴェへ出展。ここでは、ベスト・オブ・ショーを受賞している。表彰ステージへの移動で、オーナーのバンフォード卿は初めてそのブガッティを運転することになった。

ロプナー夫妻の物語を辿るのに相応しい旅へ

以降も、2023年ロイヤル・オートモービル・クラブ・ヒストリック・アワードのレストア部門で優勝。2024年にも、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードのカルティエ・スタイル・エ・リュクス・ベスト・オブ・ショーなど、受賞を重ねている。

同じグッドウッドでは、ジャン・ブガッティ氏をトリビュートした特別賞、タイプス・オブ・ジャンでタイプ57 SC アタランテ・クーペなど数台と接戦に。しかし、ここでもその美しさが評価され受賞を果たした。

往年のブガッティ・タイプ57 S コルシカ 中央の男女が初代オーナーのロプナー夫妻
往年のブガッティ・タイプ57 S コルシカ 中央の男女が初代オーナーのロプナー夫妻

「コルシカの美しい流線型ボディが、素晴らしい技術を隠していない点が気に入りました。精巧なダンパーとフロントアクスルの構造は、グランプリカーと同じですよね」。審査員を務めた、デザイナーのマーク・ニューソン氏は、こう意見を残した。

コンクール・デレガンスでの栄光を経て、バンフォード卿は、ようやく美しいブガッティを鑑賞する時間を得られたと話す。計画している南フランスへの自動車旅行は、初代オーナー、ロプナー夫妻の物語を辿るのに相応しいものとなるだろう。

スリムなボンネットへフロントスクリーンを倒し、6本並んだ細いテールパイプから排気音を奏でながら、初春の陽光を浴びるタイプ57 S。まさに、夢心地のロングドライブになるに違いない。

協力:バンフォード卿、スティーブ・クラーク氏、ティム・ダットン氏、ニール・マクレイノルズ氏、ピーター・ブラッドフィールド氏

記事に関わった人々

  • 執筆

    ミック・ウォルシュ

    Mick Walsh

    英国編集部ライター
  • 撮影

    オルガン・コーダル

    Olgun Kordal

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ブガッティ・タイプ57 S コルシカの前後関係

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