世界初の量産2+2 MR:マトラM530 歴代初の脱RR:ポルシェ914 身近なミドシップ(1)

公開 : 2025.02.16 17:45

フォルクスワーゲンポルシェのコラボ作

ただし、M530が理想的なプロポーションだとは表現しにくい。サイドビューは、不自然に長過ぎる。リアシートの空間は、充分ではなかった。フロントが過度に低く見えるスタイリングを、ナマズのようだと批判する人もいた。

確かに美しいとは表現しにくいが、筆者はそこまで醜いとは思わない。両サイドのヘッドライト部分が盛り上がり、酷く不格好なまでではないだろう。

ポルシェ914 1.7(1969〜1976年/欧州仕様)
ポルシェ914 1.7(1969〜1976年/欧州仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

同様の批判は、ポルシェが1967年に発表した914にも向けられた。細部まで精巧にデザインされていたものの、プロポーションのまとまりが悪いと当時は受け止められた。サイドビューは、どちらが前かわからないと揶揄されたほど。

フォルクスワーゲンとポルシェのコラボ作品として誕生したのが、この914。北米市場では、両社の名前を冠して販売されている。前者のカルマン・ギアと、後者の912を置き換えるべく計画が進められ、ボディシェルの製造はカルマン社へ委託された。

フォルクスワーゲンにとっては史上初の、リアエンジンから脱却した量産モデルだった。ポルシェは、1930年代のアウトウニオン・タイプ22以来、ミドシップのレーシングカーを開発していたものの、公道用の市販車では初めてでもあった。

リアエンジンの構造をミドシップへ変更するのは、フロントエンジンからより簡単といえた。当時の911の技術を巧みに活用しつつ、リアのサスペンションはトーションバーからコイルスプリングへ更新。優れた操縦性を得ていた。

ボディとは裏腹に上品なM530の内装

先駆者的な、2台の量産ミドシップを並べてみる。全長はM530が4197mmで、914が3985mmと、個性的なマトラの方が大きいが、存在感はポルシェの方が強い。

デザイン的には、M530の方が見ていて面白い。スリムなボディに独立したクロームメッキ・バンパーが前後へ備わり、リア側のスタイリングはかなり複雑。リアウインドウは開閉可能で、ルーフ側にヒンジが付いている。

オレンジのポルシェ914 1.7と、レッドのマトラM530 LX
オレンジのポルシェ914 1.7と、レッドのマトラM530 LX    マックス・エドレストン(Max Edleston)

914の見た目は、見慣れたものだろう。ラバーとクロームメッキが組み合わされたバンパーが、ボディと馴染むように前後を覆う。フォグランプの収まりも自然だ。

フラットなフロアを持つ914の車内は広々としていて、内装はスッキリまとまっている。だが、ブラックのビニールレザーで全面が覆われ、魅力的とは表現しにくい。

M530のインテリアは、より抑揚がある。ダッシュボードの上部は、見やすいメーターパネル部分を除いて、小物トレイになっている。そこを開くと、グローブボックスへアクセスできる。各部をウッドパネルが飾り、ボディとは裏腹に上品で落ち着いている。

ステアリングコラムから伸びるレバーを下げると、リトラクタブル・ヘッドライトが開く。だが閉じる場合は、クラッチペダルの左側にある4番目のペダルを踏む必要がある。珍しいフランス車への期待を裏切らない、ややこしい操作といえる。

ルーフは、どちらも頭上部分を脱着できる。M530は2ピースで、914は1ピース。リアの荷室を専有するように収まる。

この続きは、マトラM530 ポルシェ914 身近なミドシップ(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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