究極のW198型 メルセデス・ベンツ300SL ライトウエイト(2) 核心はボディ内にアリ
公開 : 2025.02.22 17:46
29台が作られた、アルミボディのW198型300SL ライトウエイト 1台目の購入者はナスカーチームのオーナー 低速では驚くほど普通のベンツ 究極の核心はボディ内にアリ 英編集部がご紹介
もくじ
ー通常の300SLより15ps強力なライトウエイト
ーミッドセンチュリーの実直さを感じる内装
ー驚くほど普通のメルセデス・ベンツ
ー究極のW198型 その核心はボディ内にアリ
ーメルセデス・ベンツ300SL ライトウエイト(1955〜1956年/北米仕様)のスペック
通常の300SLより15ps強力なライトウエイト
メルセデス・ベンツの天才技術者、ルドルフ・ウーレンハウト氏と、レーシング・マネージャー、アルフレッド・ノイバウアー氏は、強固なボディがラリーへ適すると判断。300SL ライトウエイトという試みは、成功とはいえなかった。
ただし、実際はアルミニウム製ボディ以外にも多くの改良が施されていた。燃料インジェクションの2996cc直列6気筒SOHCエンジンは、高圧縮比化。専用カムシャフトが組まれ、通常の300SLより増強されていた。

300SL ライトウエイトの最高出力は、15ps増しの240psへ到達。250GT ベルリネッタが搭載する、V型12気筒に匹敵するパワーを得ていた。
フロントブレーキはドラムだが、大きな冷却フィンを装備。耐フェード性が高められている。サスペンションのダンパーとスプリングも、引き締められた専用品。リアはスイングアクスルながら、意欲的なコーナリングを実現していた。
また、標準レシオとドライバーの希望に合わせたレシオの、2基のリアアクスルが付帯した。今回の例の初代オーナーだったカール・キーケーファー氏は、ノックオフ・ハブとセンターロック式のラッジ社製スチールホイールを、オプションで選んでもいる。
そして今日は、極めて貴重な1台へ試乗させていただけるという。緊張を和らげるため、最近の価値は確認しないでおいた。
別のライトウエイトが、2024年10月のRMサザビーズ・オークションでは935万5000ドル(約14億5000万円)で落札されたと知ったのは、取材後。先に調べていたら、恐ろしくてアクセルペダルを踏み込めなかったはず。
ミッドセンチュリーの実直さを感じる内装
ガルウイングドアを開き、バケットシートへ腰を落とす。サイドシルが広く、足をぶつけずに乗り込むのは簡単ではないが、ステアリングホイールを下向きに倒さなくても大丈夫ではあった。
このステアリングコラムの機構を撮影してもらおうと、カメラマンの前で試してみた。それを聞いていなかった彼は、クルマを壊したと勘違いしたのか、表情を引きつらせていた。初見の人を相手に、イタズラできるようだ。

ホワイトのボディとレッド・レザーのインテリアは、キーケーファーが追加料金でコーディネートしたもの。当時から、スーパーカーのオプションはふんだんに用意され、高額だった。陽光を受ける紅白のコントラストが美しい。1950年代らしい。
左足の横には、ダッシュボードの直下からサイドシルまで真っ直ぐ伸びる、チューブラーフレームのパイプが見える。ブラックのラバーで覆われているが、ショールームでは、構造を説明するのに活躍した部分だったはず。
ドアを引き下ろして閉じると、内装は同時代のメルセデス・ベンツ以上に豪華でも質素でもないが、居心地が良い。正面には大きなメーターが2枚。ホワイトのパネルと、クロームメッキが輝いている。
トランスミッショントンネルはカーペットで包まれ、シフトレバーの付け根は、ラバー製のアコーディオン・カバーで覆われている。ハンドブレーキのレバーは、スチール製パイプで先端に小さなボタン。ミッドセンチュリーの、実直さを感じる。
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