最新992.2それぞれの魅力 ポルシェ911へ試乗 素のカレラか、HVのGTSか、MTのTか

公開 : 2025.02.21 19:05

充分に気持ちいい素のカレラ 瞬間的に加速するGTS

それでは、通常のカレラで公道へ出てみよう。小改良で9ps増強されたが、直接992.1と乗り比べない限り実感はしにくい。とはいえ充分に速く、低域からたくましく、聴き応えのあるサウンドを響かせる。

これ以上911へ必要なモノがあるのか、疑問が湧いてくる。乗り心地はやや硬めで、ロードノイズは小さくないものの、高速域でも至って安定。サスペンションをソフトにすると、路面へ優しく追従しつつ、加減速でフロントノーズが僅かに上下動する。

ポルシェ911 カレラGTS T-ハイブリッド(992.2型/英国仕様)
ポルシェ911 カレラGTS T-ハイブリッド(992.2型/英国仕様)

ボディは小柄とは呼べないが、広くない道でも充分に扱いやすい範囲。正確な操舵感と高いグリップ力で、不安なく導ける。ブレーキも強力で調整しやすい。素晴らしいエンジンを堪能しながら、滑らかに駆けていくのが気持ちイイ。

8速PDKは、2速で引っ張ると100km/h。個体差かもしれないが、マニュアル・モード時に変速が若干遅れる印象があった。

他方、カレラGTSは541psあるから、追い越し加速は瞬間。992.1の911 ターボと、ほぼ同等のパワーが繰り出される。電気モーターの存在感は薄いが、現実世界で引き出せるギリギリの速さだ。992.2 ターボのベースになる可能性はある。

唸るほど、グレートブリテン島の傷んだ路面へ対応していた。カレラより乗り心地は硬いものの、減衰特性が優れるのか、不快な振動はない。ステアリングホイールには一層の手応えが伴い、より深い一体感を享受できる。

賑やかでも小さくない興奮を味わえるT

MTで911を嗜みたいなら、選べる内にカレラTを入手したい。シフトレバーを自ら傾け、ヒール&トウでのコーナリングは、運転の充足感を間違いなく引き上げてくれる。公道では高すぎる限界領域へ迫れなくても、小さくない興奮を味わえるはず。

シフトフィールはダイレクトかつ正確で、案の定素晴らしい。クラッチペダルは重めながら、ミートポイントを掴みやすい。

ポルシェ911 カレラGTS T-ハイブリッド(992.2型/英国仕様)
ポルシェ911 カレラGTS T-ハイブリッド(992.2型/英国仕様)

乗り心地は、こちらもカレラより硬め。軽量化の結果は感じにくく、車内はやや賑やか。後輪操舵システムは、目立たず回頭性を助けてくれる。

サーキットでは、1520kgの素のカレラが表現力豊かで好ましい。カレラGTSには速さで及ばなくても、全開で走るのが面白い。ペダルの加減で、オーバーステアからアンダーステアまで自在。ステアリングホイールへ伝わる感触も不満ない。

カレラ4 GTSは、数段速いことへ舌を巻く。カレラの全力など、余裕で引き離せるだろう。3.6Lエンジンは音量が大きく、レスポンスは極めて鋭敏。2基の電気モーターが加勢し、ややドラマチックさは薄いものの、ターボラグのようなものはまったくない。

コーナーではカレラ以上の重さを感じるが、安定性も秀抜。アナログ感が薄いかわりに、より大胆に操れる。

後輪駆動のカレラGTSは、コーナ出口での敏捷性が僅かに高まる。ライン調整もしやすく、四輪駆動より一層好印象。1595kgと重すぎず、親しみやすく、ステアリングホイールの感触も更に濃くなる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    役職:編集委員
    新型車を世界で最初に試乗するジャーナリストの1人。AUTOCARの主要な特集記事のライターであり、YouTubeチャンネルのメインパーソナリティでもある。1997年よりクルマに関する執筆や講演活動を行っており、自動車専門メディアの編集者を経て2005年にAUTOCARに移籍。あらゆる時代のクルマやエンジニアリングに関心を持ち、レーシングライセンスと、故障したクラシックカーやバイクをいくつか所有している。これまで運転した中で最高のクルマは、2009年式のフォード・フィエスタ・ゼテックS。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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