ツインモーター全開放で436ps 日産アリア・ニスモへ英国試乗 リア寄りトルクは感じにくい
公開 : 2025.02.22 19:05
加速の勢いは300馬力程度? リア寄りも感じにくい
435psの威力を期待し、公道へ。ところが、アクセルペダルを踏み込んでも、加速の勢いは300馬力程度といったところ。400馬力あるようには感じにくい。
その理由は、アクセルのマッピングにある様子。キックダウン・ポイントへペダルを倒すまで、速度上昇は穏やかなのだ。また加速度も、速度の上昇に合わせて徐々に増していく。80km/hを超えた辺りから、すべてのパワーが開放されるようだった。

回生ブレーキは、シフトセレクターのDかB、e-ペダル・モードのオンかオフによって強さが変化する。だが、完全な惰性走行やワンペダルドライブには対応しない。
最大で6割をリアが受け持つというトルク分配の変化は、走りからは感取しにくい。通常のアリアと直接乗り比べられたわけではないが、全体的にはフロントが主役という印象は拭えなかった。
完全にはオフにならない、ESCオフを選んでも、パワーオンでの回頭性は高まらない。アクセルペダルを緩めるとフロントノーズが内側へ絞られていくが、重く大きなクロスオーバーだから、過度なきっかけは与えない方が良いだろう。
軽く回せる、ステアリングホイールの反応は直感的。手のひらへのフィードバックは薄いものの、フロントタイヤのグリップ力は高い。カーブが連続する区間を、軽快に飛ばせるとは思う。
試乗場所はフランスだったが、滑らかな路面でも乗り心地は硬め。減衰特性は悪くなく、不快な揺れは伴わないものの、落ち着いているわけではない。荒れた路面では、細かな振動が続きそうだ。
ニスモなら、これ以上を求めたい
エネルギー効率は、寒い冬だったとはいえ、丁寧に運転しても4.0km/kWh。駆動用バッテリーは87.0kWhと小さくはないのだが、現実的な航続距離は350km前後に留まる計算だ。急速充電は最大130kWと、クラス最速というわけでもない。
高い期待を抱きたくなる、アリア・ニスモ。だが比較するなら、ID.4 GTXの方が、リア寄りのスポーティな運転体験を叶えている。後輪駆動のアリアがベースなら、もっとニスモらしさを演出できたかもしれない。

運転の楽しいバッテリーEVを仕上げることは、簡単なものではない。それ故に、突如登場したアイオニック5 Nは一目置かれる存在になっている。
アリア・ニスモは、乗り心地や価格、航続距離など、ベースモデルからの代償が小さくない。パワーアップされ、ハイグリップなタイヤを履き、ボディキットで着飾ってはいる。だが、それ以上を求めたくなるのは筆者だけではないだろう。
◯:直感的な操縦性 確かなグリップ力 優れたシャシーバランス
△:硬い乗り心地 伸び悩む電費 もう少しを期待したい運転体験
日産アリア・ニスモ(英国仕様)のスペック
英国価格:5万6620ポンド(約1104万円)
全長:4595mm(標準アリア)
全幅:1850mm(標準アリア)
全高:1660mm(標準アリア)
最高速度:199km/h
0-100km/h加速:5.0秒
航続距離:420km
電費:4.1km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:2217kg
パワートレイン:ツイン外部励起同期モーター
駆動用バッテリー:87.0kWh
急速充電能力:150kW
最高出力:436ps
最大トルク:61.1kg-m
ギアボックス:1速リダクション(四輪駆動)
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