【タイヤの作り方が根底から変化!】ブリヂストンからミニバン、コンパクトSUV向けタイヤ、レグノGR-X IIIタイプRV登場

公開 : 2025.02.16 11:45

全く異なるフィーリング

実際に走行してみると、軽々と滑らかに走り出し、しかも静粛性に優れている。タイプRVは、これまでと違うアプローチから、従来を超える上質な乗り味と静粛性を実現していた。

さらに乗り味は、先代のレグノGRV IIと比べると別物と感じるくらいテイストが大きく異なっている。その差がよく表れていたのは、先代のトヨタアルファードを使って特設コースに設置されていたレーンチェンジを試みた時だった。

特設コース内でレーンチェンジをする先代のトヨタ・アルファード。
特設コース内でレーンチェンジをする先代のトヨタ・アルファード。    神村聖

GRV IIは微細な応答の遅れと、そこからグイッと曲がり出すような感覚がある。単独で乗れば気になるレベルではないが、タイプRVはハンドルを切り出した瞬間から遅れなく応答が出ており、コーナリングフォース(クルマを曲げる力)が滑らかに立ち上がってくるのだ。ハンドルの手応えに繊細な感触が届き、運転してするのが楽しいと感じられるほどだった。

ドライバーの手応えだけではない。GRV IIはレーンチェンジした時の横Gの出方が強く、パッセンジャーシートや2列席に乗った人の体が揺れてしまうのだが、同じスピード、同じ操作で運転しているにも関わらず、タイプRVは横Gが穏やかで、しかも乗員の体が揺れないのである。

これは、タイヤの変形を剛性で受け止めるGRV IIと、サイドウォール全体をしなやかに変形させながら力を受け止めるタイプRVの違いではないだろうか。

軽くしなやかに

じつは厳密に言うと、乗り心地の出方にも違いがある。

大雑把に言ってしまうと、ゴムのボリュームで乗り心地を出していたGRV IIに対して、タイプRVは内圧の張力で剛性を出し、タイヤサイドウォールのしなやかな変形で乗り心地を出すメカニズムに変わっているのだ。だから、数ミリ程度の小さな凹凸に対しては、割合素直に凹凸を拾う。これが直径10mmくらいのロープの乗り越えになると、振動の収束がとても早くなっているので、ショックの振動がスーッと消え、歯切れのいい乗り心地になる。

EVにもマッチするということで、この日はメルセデス・ベンツEQBも試乗車に用意されていた。
EVにもマッチするということで、この日はメルセデス・ベンツEQBも試乗車に用意されていた。    神村聖

振動の出方といなし方だと思うのだが、開発テストでは、乗り心地を良くしているのに安っぽくなってしまうこともあったのだとか。高級感のある乗り心地にも注意してチューニングしたということだ。

AI技術を含め、デジタル開発技術を積極的に取り入れて開発されたレグノGR-X IIIであるが、その一方で人間の感性によるチューニング施すことで、感覚的にも心地よいタイヤに仕上がっていると感じた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    斎藤 聡

    1961年生まれ。学生時代に自動車雑誌アルバイト漬けの毎日を過ごしたのち、自動車雑誌編集部を経てモータージャーナリストとして独立。クルマを操ることの面白さを知り、以来研鑽の日々。守備範囲はEVから1000馬力オバーのチューニングカーまで。クルマを走らせるうちにタイヤの重要性を痛感。積極的にタイヤの試乗を行っている。その一方、某メーカー系ドライビングスクールインストラクターとしての経験は都合30年ほど。
  • 撮影

    神村聖

    Satoshi Kamimura

    1967年生まれ。大阪写真専門学校卒業後、都内のスタジオや個人写真事務所のアシスタントを経て、1994年に独立してフリーランスに。以後、自動車専門誌を中心に活躍中。走るのが大好きで、愛車はトヨタMR2(SW20)/スバル・レヴォーグ2.0GT。趣味はスノーボードと全国のお城を巡る旅をしている。
  • 編集

    小河昭太

    Shota Ogo

    2002年横浜生まれ。都内の文系大学に通う現役大学生。幼いころから筋金入りのクルマ好きで、初の愛車は自らレストアしたアウトビアンキA112アバルトとアルファロメオ2000GTV。廃部になった自動車部を復活させようと絶賛奮闘中。自動車ライターを志していたところAUTOCAR編集部との出会いがあり、現在に至る。instagram:@h_r_boy_

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