レクサスが作ったバギー? ヤマハと水素燃料の可能性を探る H2 ROV 試作車の助手席へ同乗

公開 : 2025.02.20 19:05

水素燃料の可能性を探るべく、ヤマハと共同開発されたレジャー用バギー 1.0L 3気筒を最適化 最高出力は81ps 自然分解される潤滑油 間違いなく楽しい走り 英編集部がその助手席へ

レジャー用バギーで水素燃料の可能性を探る

レクサスH2 ROVという名のコンセプトカーは、トヨタの上級ブランドとして、歴代で最も不釣り合いなモデルかもしれない。高級感は薄いし、優雅な見た目ともいえない。

しかし、乗ればすこぶる楽しい。エネルギーの未来に対する、同社による大胆なアプローチでもある。ちなみにROVとは、レクレーショナル・オフハイウェイ・ヴィークル、娯楽用オフロード車の略だ。

レクサスH2 ROV(プロトタイプ)
レクサスH2 ROV(プロトタイプ)

レクサスのチーフエンジニア、加藤武明氏へお話を伺った。「弊社の量産モデルはラグジュアリー志向です。しかし、そのオーナーの方も、思い切り遊びたいと考えていらっしゃいます」

「特に北米では、レクサス・オーナーにもレジャー用バギーを所有されている方がいらっしゃいます。そんな方のために、レクサスを提供できると考えました」

このバギーは、レクサスとトヨタの技術を進展させるうえで、重要な意味を持つ。H2 ROVは、その名の通り水素を燃料としている。燃料電池ではなく、内燃エンジンを搭載しており、走行中の排気ガスは完全な水蒸気だ。

バッテリーEVには、まだ駆動用バッテリーの重さや容量といった弱点がある。その影響が大きい分野で、水素の可能性を証明する取り組みの一環だという。

水素を生成する過程での環境負荷や、バッテリーとモーターで比較した時のエネルギー効率など、検討すべき要素は多いし、見解も異なるだろう。だが、水素で走るバギーがどれだけ面白いのか、試さない理由はない。

1.0L 3気筒を水素へ最適化 最高出力は81ps

H2 ROVには「L」のエンブレムが付くが、実際はレクサス製ではない。トヨタと技術的な協力関係を持つヤマハが量産する、YXZ 1000Rがベースだ。

ヤマハは、軽量・小型なオフロード・バギーに対して豊かな経験を持つ。そこへ、レクサスが研究する水素エンジンと、持続可能性へ配慮された新素材の技術が融合している。

レクサスH2 ROV(プロトタイプ)
レクサスH2 ROV(プロトタイプ)

通常のYXZ 1000との最大の違いは、エンジン。オリジナルの998cc直列3気筒ガソリン・ユニットをベースに、圧縮水素を燃料にできるよう改良されている。直噴技術は、水素燃料仕様のトヨタGRヤリス・コンセプト譲りだそうだ。

「大変な作業でした。最適化のため、ヘッドとインジェクター周りはすべて変更してあります」。加藤が説明する。

果たして、最高出力は81ps。ガソリン仕様では113psだから、2割ほどパワーダウンしているが、大きな低下とまではいえないだろう。技術的には開発途上で、性能が優先されたわけではないとのこと。

トランスミッションは、5速シーケンシャル・マニュアル。後輪駆動と四輪駆動を切り替えられるドライブトレインは、YXZ 1000と同じらしい。

最高速度は99km/hで、これも49kmほど低い。だが、オフロード前提の小さなレジャー・バギーだと考えれば、不足ないように思える。

水素燃料タンクは、トヨタ・ミライの技術を利用。満タンでの航続距離は17kmと短く、北米大陸でのアドベンチャーには向いていない。だがROVは往々にして、そこまで長い距離の利用は想定されていない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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