レクサスが作ったバギー? ヤマハと水素燃料の可能性を探る H2 ROV 試作車の助手席へ同乗

公開 : 2025.02.20 19:05

自然分解される潤滑油 ボディはリサイクル素材

これらの条件は、レクサスが関心を示した理由でもある。「水素エンジンのGRヤリス・レースカーは、高性能へ軸が置かれていますが、こちらはもっと一般的な利用が想定されています。1000-2000rpmでのパフォーマンスや、扱いやすさなどを検証できます」

車重は690kgから760kgへ増え、安定性を高めるためトレッドは前後とも100mmプラス。最低地上高は330mmで不変だが、KYB社製のダンパーは調整を受け、起伏での安定性や乗り心地は改善している。これは、レクサス的なアップデートかもしれない。

レクサスH2 ROV(プロトタイプ)
レクサスH2 ROV(プロトタイプ)

持続可能性へ配慮された新素材という点では、リサイクルできる生分解性潤滑オイルが注目すべき1つ。自然界の微生物でオイルは分解されるため、仮に走行中に漏れても、環境へのダメージをほぼないものにできる。

ボディパネルには、製造時の環境負荷が小さい素材を使用し、フロントガラスは、植物由来のバイオ・ポリカーボネート製。製造時に排出されるCO2を、従来品から80%も削減できているとのこと。

バンパーとボンネットは、廃車からリサイクルされた樹脂と、植物由来の樹脂をブレンドした素材でできている。それを固定するクリップも、植物由来の生分解性プラスティックが用いられている。

ボディの表面はフィルムラッピングされており、塗装仕上げより9kg軽いとか。傷が付いても、簡単に修復できる。シートのクッション材は、リサイクル・ポリエステル製だ。

殆ど到達できない場所はない?

H2 ROVの助手席へ同乗させてもらったのは、フランス北部、ドゥルー・サーキットのモトクロスコース。その走りっぷりは爽快で、殆ど到達できない場所はないように思えた。修復しやすいボディは、大きなメリットに違いない。

サスペンションはしなやかにストロークし、物理の法則を無視するように、路面の凹凸へタイヤが追従する。急な起伏を次々と越えても、接地性は失われない。岩が露出したダートを高速でコーナリングしても、安定性は失われない。

レクサスH2 ROV(プロトタイプ)
レクサスH2 ROV(プロトタイプ)

間違いなく楽しい。ドライバーも楽しそうだ。トヨタの開発動機も、しっかり体現されたといえる。「ヤマハは、今回のプロジェクトだけでなく、レースカーの開発でも協力していただいています。お互いに学びあう関係といえます」。加藤が続ける。

「このプロジェクトが、量産へ結びつくかどうかはわかりません。しかし、それぞれの技術は量産モデルへフィードバックされていくはずです」

レクサスH2 ROV(プロトタイプ)の仕様

英国価格:−ポンド
全長:3251mm(標準YXZ 1000R)
全幅:1636mm(標準YXZ 1000R)
全高:1740mm(標準YXZ 1000R)
最高速度:99km/h
0-100km/h加速:−秒
燃費:−km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:760kg
パワートレイン:直列3気筒998cc 自然吸気
使用燃料:水素
最高出力:81ps
最大トルク:8.9g-m
ギアボックス:5速シーケンシャル・マニュアル(四輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    役職:雑誌副編集長
    英国で毎週発行される印刷版の副編集長。自動車業界およびモータースポーツのジャーナリストとして20年以上の経験を持つ。2024年9月より現職に就き、業界の大物たちへのインタビューを定期的に行う一方、AUTOCARの特集記事や新セクションの指揮を執っている。特にモータースポーツに造詣が深く、クラブラリーからトップレベルの国際イベントまで、ありとあらゆるレースをカバーする。これまで運転した中で最高のクルマは、人生初の愛車でもあるプジョー206 1.4 GL。最近ではポルシェ・タイカンが印象に残った。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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