時代と共に変化するスーパーカーという言葉【新米編集長コラム#18】

公開 : 2025.02.11 15:05

AUTOCAR JAPAN編集長ヒライによる、新米編集長コラムです。編集部のこと、その時思ったことなどを、わりとストレートに語ります。第18回は、『スーパーカー』をテーマにしつつ、昨年11月に取材した『コーンズ・デイ2024』もご紹介します。

スーパーカーの定義とは

今回はスーパーカーの話をしたいと思う。過去担当した媒体の関係で、人によく聞かれたのは、『スーパーカーの定義』だ。そこで私は、いつもこう答えていた。「あなたがスーパーカーだと思えば、それが軽自動車であっても、どんなクルマでもスーパーカーになるんです」。

『スーパーカー』は、特に日本で認知度の高い言葉だ。それが1977年をピークとするスーパーカーブームに由来することは、疑いの余地がないだろう。筆者もボクシーのボールペンでスーパーカー消しゴムを飛ばした世代で、学校で流行しすぎて、最終的には持ち込み禁止となったような気がする。

スーパーカーと言えば、跳ね上げ式のドアだろう。昨年11月にコーンズ・デイ2024にて撮影。
スーパーカーと言えば、跳ね上げ式のドアだろう。昨年11月にコーンズ・デイ2024にて撮影。    平井大介

当時はランボルギーニカウンタックフェラーリ(365/512)BB、ポルシェ(911)ターボ、マセラティ・メラク、ロータス・ヨーロッパなどが主流であったが、当時の小学生向け雑誌に『日本初のスーパーカー、童夢零登場!』と紹介されたのが衝撃的で、今どきの言い回しにすれば『推しスーパーカー』となったのも懐かしい。

スーパーカー雑誌の編集を担当していた当時、これを第1次スーパーカーブームと定義。以後、フェラーリF40テスタロッサが躍動した1980年代後半バブル経済の頃を第2次スーパーカーブームと呼び、2003年を第3次スーパーカーブームの始まりと呼んでいた。

第3次の2002~2003年は凄かった。フェラーリから登場したエンツォを筆頭に、ランボルギーニ・ガヤルド、ポルシェ・カレラGT、ブガッティ・ヴェイロン、アストン マーティンDB9などが一気に登場したのだ。当時は海外モータショー取材に通っていたので、ワールドプレミアが続々と目前で行われた光景に、興奮したのもよく覚えている。

スーパーカーの大衆化

その頃から日本で起こったのは、スーパーカーの大衆化だ。例えば『大乗フェラーリ教開祖』を名乗ったジャーナリストの清水草一さんが、自ら中古フェラーリを購入しつつ『ビンボーでもフェラーリは買える!』と様々な原稿を執筆。筆者も2009年、清水さんと一緒に『年収300万円台から始めるフェラーリ購入計画』(ネコ・パブリッシング刊/当時)というムックを製作し、以後もシリーズで何冊か作らせて頂いた。そうやって微力ながら、夢見る元スーパーカー少年&少女の背中を押してきたつもりだ。

しかしその後、フェラーリを始めとしたスーパーカーの価格は、新車も中古車も高騰する一方となった。これはスーパーカーに限らず、クラシックカーもスポーツカーも、憧れのクルマは全て高価な印象で、クルマを趣味とすることのハードルはすっかり高くなってしまった。こうして、日本におけるスーパーカーの大衆化は静かに幕を閉じたのである。

フェラーリを始めとしたスーパーカーの価格は、新車も中古車も高騰する一方。F40はまさに雲上の世界だ。
フェラーリを始めとしたスーパーカーの価格は、新車も中古車も高騰する一方。F40はまさに雲上の世界だ。    平井大介

現在のスーパーカーたちは、どうやって他とは違う価値=ブランドを提供するか、苦心している。2003年のブガッティ・ヴェイロンが最高出力1001ps、最高速400km/h以上を標榜したあたりでパワーウォーズの限界点が見えてきて、その一方でランボルギーニが2007年にムルシエラゴをベースとした20台限定車、レヴェントンで100万ユーロの車両価格を掲げたあたりから、少量生産モデルが一気に増え始めた。フェラーリのテーラーメイド、ランボルギーニのアドペルソナムなど、オーダーメイドシステムの充実が図られたのも、このあたりの年代からだ。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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