【概要、本質、期待!自動車ニュースを読む】レクサスRCに見る、各社が最後に打ち出すファイナル・エディションの価値

公開 : 2025.02.14 11:45

毎日のように各メーカー、インポーターなどから発信されるプレスリリース。その中から1本をピックアップし、概要、本質、期待という3項目で分析するコラムです。ジャーナリスト橋爪一仁が『レクサスRC、RC Fのファイナル・エディション』を解説します。

【概要】レクサスが『RC』と『RC F』にファイナル・エディションを設定

レクサスは『RC』と『RC F』にファイナル・エディションを設定し、2025年1月16日から発売(これに伴いパッケージはファイナル・エディションのみとなり、『RC F』は200台限定)。インテリアカラーにブラック&フレアレッドが採用され、ボディカラーに新色のソニックイリジウムも設定された。

『RC』はこれまで62の国と地域で累計約7万9000台、『RC F』は57の国と地域で累計約1万2000台を販売、2025年11月をもって生産終了を予定する。

レクサスは『RC』(左)と『RC F』(右)にファイナル・エディションを設定。
レクサスは『RC』(左)と『RC F』(右)にファイナル・エディションを設定。    レクサス

『RC』にはスパッタリング塗装を施したエンケイ製19インチアルミホイールやレッドブレーキキャリパー、ブラック塗装とスモーク塗装加飾を施したオート電動格納式ドアミラー等が設定され、インテリアには新たに東レのウルトラスエードやカーボンパーツ等を採用した(価格は666万円~)。

『RC F』には、質量合わせやクリアランス調整で回転バランス最適化とフリクション低減を図りV8エンジンの伸びやかさに磨きをかけた『高精度チューニングエンジン』と、熟練工がバックラッシュ(ギア間の遊び)を手作業で調整して応答性の向上とドライビングフィールの上質さを高めた『高精度チューニングリアディファレンシャル』を搭載。

メタルスターグロスブラック塗装が施されたBBS製19インチ軽量鍛造アルミホイール、レッドブレーキキャリパー、ブラック塗装とスモーク塗装加飾を施したオート電動格納式ドアミラー、カーボンアクティブリアウイング(格納式)等を採用した(価格は1360万円~)。

【本質】各社が最後に打ち出すファイナル・エディションの価値

多くのモデルにおいて、ファイナル・エディション=最終バージョンが発売されることは多いが、その背景にはいくつかの理由が考えられる。ポイントとして、ファイナル・エディションが設定される際におよそセットで生産終了時期や限定生産のアナウンスも行われ、ユーザー視点では、現存するモデルを最後に手に入れたいといった衝動や、そのモデルの完成形といっても良い価値から、購入意欲がそそられるといった側面がある。

メーカー視点では、商品の企画にあたって大別するとふたつの意義が存在する。

ファイナル・エディションは、ユーザーとメーカーがウィン・ウィンの関係にある。
ファイナル・エディションは、ユーザーとメーカーがウィン・ウィンの関係にある。    レクサス

ひとつ目にエンジニア視点では、最終仕上げのモデルとして今回の『RC F』に導入された『高精度チューニングエンジン』や『高精度チューニングリアディファレンシャル』のように技術を突き詰め、最後に一番良い製品、商品とすることで有終の美を飾りたいといった側面がある。

ふたつ目に収益、生産販売視点では、イニシャルコストの減価償却として、既に研究開発や生産(金型費など)、販売管理、その他のコスト回収がされていたとしても、さらに少しでも生産販売することで収益性を高めたいといった側面もある。

つまり、ファイナル・エディションの価値はユーザーとしての喜びとメーカー(およびサプライヤーや販売会社など)としての喜びがウィン・ウィンの関係にあると言っても良く、他の限定モデルも同様だが、未来にはプレミアモデルとして賞賛される可能性も高い。

記事に関わった人々

  • 執筆

    橋爪一仁

    Kazuhito Hashizume

    ジャーナリスト。自動車業界を経て現在はアビームコンサルティング(エグゼクティブ・フェロー)。企画業務を中心に自動車のブランド・オリジナリティ時代におけるCASE、DX×CX、セールス&マーケティング、広報、渉外、認証、R&D、工場管理、生産技術、製造等の幅広い領域を研究、アドバイザー業務を中心に活動中。特に自動車を経済と技術の側面から分析するのが専門。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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