ピュア&ドラマチック ロータス340R ルノー・スポール・スパイダー(2) 軽いシャシーへハマる
公開 : 2025.03.01 17:46
軽いシャシーへピタッとハマった印象
アスファルトが乾燥していれば、フロントタイヤのグリップ力は見事。アクセルペダルの踏み込み加減で、ラインを調整していける。
ブレーキはサーボレスで、充分な制動力を得るには相応の踏力が求められる。アグレッシブな見た目から想像するほど、スポール・スパイダーは速くないから、ペダルの感触が若干曖昧でも不安感はほぼない。

他方、340Rのオーナーは、ロバート・ジョンソン氏。ミニマリスティックな佇まいが、むしろドラマチックだ。離れて眺めると、薄いサイクルフェンダーはタイヤと一体に見え、オープンホイールのレーシングカーのよう。
小さなエンジンカバーは、8本のボルトで固定されている。サスペンション・アームとコニ社製ダンパー、世界最小のリアガラスがはめられたロールバー、テールライト、ジャンスピード社製のツインテール・マフラーまで、すべてがむき出しだ。
太ももを高く持ち上げ、バケットシート前のフロアへつま先を伸ばす。メーターパネルは、回転計と速度計の2枚があるだけで、スポール・スパイダーより簡素。デジタル部分に、補足情報が表示される。
ライト類のボタンは、シフトレバー前のアルミ製ポストへ集約。腰を下ろすと、スポール・スパイダーと同様に、軽いシャシーへピタッとハマった印象を受ける。最適な運転姿勢は、簡単に見つかる。3枚のペダルは正面に並ぶが、左足の置き場が狭い。
絶賛に値するルノー版モダン・ケータハム
340Rは、エンジンの始動直後から様相が違う。Kシリーズ・エンジンは豪快なノイズで始動。音質は、エリーゼのそれと近い。
カーブへ飛び込めば、即座に満たされる。速いだけでなく、手のひらや背中への情報量が半端ない。数kmも走ればシャシーと意気投合でき、リアタイヤのグリップを抜きながら、濃密な運転体験へ没入できる。

エリーゼより、遥かに軽くも感じられる。すべての反応が軽快で精緻。スプリングとダンパーは、荒れた路面へ息を合わせるようにタイヤを追従させる。グリップ力も素晴らしい。
今回の340Rは、ロータス認定のオプションが組まれ、スポーツ190と同じ192ps仕様へアップグレードされている。エンジンECUの再マッピングとカムプーリーの変更、レゾネーターバルブやセカンダリー・エアフィルター、触媒の省略などで叶えている。
動力性能は圧巻。Kシリーズのサウンドもドラマチックとはいい難いが、より深みが増している。低域トルクだけでなく、4000rpm以上の炸裂感は痛快。ハイエンドなケータハムのように意欲的だ。
運転体験でいえば、340Rはスポール・スパイダーを凌駕するだろう。筆者がこれまで運転したクルマの中で、最高の1台に加えられる。
とはいえ、大型トラックまで手掛けた巨大メーカーが目指した、ルノー版モダン・ケータハムにも賛辞を送りたい。ロータスが達成した水準へ遠くない、純粋な時間を公道で過ごせるのだから。
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