悦楽追求のプライベート・ベントレー アズール・コンバーチブル ブルックランズ・クーペ(1)

公開 : 2025.03.02 17:45

コーチビルドの魅力を21世紀に蘇らせた、アズール・コンバーチブルとブルックランズ・クーペ 初代コンチネンタルGTより上の、悦楽を追求したプライベートカー 英編集部が魅力を振り返る

コーチビルド・モデルの魅力を21世紀に

1991年に登場したベントレー・コンチネンタル Rは、商業的な成功を導いた。12年間に、1854台がラインオフしている。その後光をまとった、2006年のアズール・コンバーチブルと2008年のブルックランズ・クーペは、同社の地位を確固たるものにした。

職人による手仕事は当たり前。1950年代前後に華やかだったコーチビルド・モデルの魅力を、21世紀に蘇らせた意欲作だ。

手前からヴィーナス・グレーのアズール・コンバーチブルと、アンスラサイト・グレーのブルックランズ・クーペ
手前からヴィーナス・グレーのアズール・コンバーチブルと、アンスラサイト・グレーのブルックランズ・クーペ    ジョン・ブラッドショー(John Bradshaw)

ブルックランズ・クーペは全長5411mmのハードトップで、車重は約2.7t。3116mmのホイールベースは、1998年の4ドアサルーン、アルナージと共有していた。

余裕あるボディサイズのおかげで、同時代の殆どのクーペより広い車内を実現。左右に独立した後席側の頭上空間は、サルーンと遜色ないゆとりを有した。

サスペンションはダブルウイッシュボーン式。先進的なアダプティブダンパーが、引き締まったコイルスプリングに組み合わされた。トラクションは、ZF社製の6速オートマティックが採用されている。

コンチネンタル Rでは、ボディ剛性を保つためBピラーが備わったが、ブルックランズ・クーペでは省略。支柱を1本除いても、堅牢なボディを作る技術を有することが、優雅なフォルムで表現されていた。

リアガラスは、ルーフから連続する滑らかなCピラーへ浮いているように、ピタリと収まった。リアのフェンダーパネルを、手作業でピラー部分と溶接することで、可能としたデザインだった。

北米で販売された量産車で燃費は最悪?

エンジンは、6.75Lのオールアルミ製OHV V型8気筒ツインターボで、537psと106.8kg-mを達成。同時代の量産V8ユニットとして、世界最高の最大トルクだと主張された。ターボラグを減らし、トルクの9割は1800rpmから3800rpmで湧出した。

カムシャフトや点火タイミングなど細かな改良が積み重ねられ、オリジナルは1959年の6.2Lユニットへ遡るが、最高出力は2倍近い。しかし、カムシャフトはチェーンやベルトではなく、ギアで駆動。バルブはプッシュロッドで開閉される。

ベントレー・ブルックランズ・クーペ(2008〜2011年/英国仕様)
ベントレー・ブルックランズ・クーペ(2008〜2011年/英国仕様)    ジョン・ブラッドショー(John Bradshaw)

巨体でありながら、ブルックランズ・クーペの最高速度は296km/h。0−97km/h加速を5.3秒でこなす。一方、北米で販売された量産車で燃費は最悪だと、米国エネルギー省は明らかにした。カタログ値でも、3.2km/Lに留まった。

ただし、これは市街地中心での場合。穏やかに巡航すれば、6.4km/Lまで伸ばすことも不可能ではなかった。ガソリンタンクは96Lと巨大で、裕福なオーナーにとって、空になるまで516kmも走れる事実は魅力的に映ったことだろう。

インテリアに使われたレザーは、1台あたり牛16頭ぶん。天井の内張りだけで、1頭ぶんが充てがわれた。荷室の容量は374Lで、小さすぎると感じた人は少なくなかったはず。

筆者がブルックランズ・クーペを初めて目撃したのは、2006年のスイス・ジュネーブ・モーターショー。ラグジュアリー・クーペは嫌いではないものの、当時のベントレーらしく、ちょっと盛りすぎな印象を受けたことは間違いない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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