悦楽追求のプライベート・ベントレー アズール・コンバーチブル ブルックランズ・クーペ(1)

公開 : 2025.03.02 17:45

悦楽を追求したプライベートカー

他方、ひと足先に登場していたコンバーチブルのアズールは、より整った仕上がりに感じていた。ガラスエリアから下のスタイリングは同一といっていいが、ラグジュアリーな4シーター・オープンとして、まだ現実世界に馴染んでいるように思えた。

それでも、大きなソフトトップを格納するため、荷室はブルックランズ・クーペより狭かった。小さなハッチバック並みの、310Lだ。

ベントレー・アズール T コンバーチブル(2006〜2010年/英国仕様)
ベントレー・アズール T コンバーチブル(2006〜2010年/英国仕様)    ジョン・ブラッドショー(John Bradshaw)

アルナージ・コンバーチブルとして、コンセプトカーがお披露目されたのは2005年のアメリカ・ロサンゼルス・モーターショー。その秋にはドイツ・フランクフルト・モーターショーで、量産仕様が発表されている。

アルナージ由来のシャシーはカーボンファイバーで補強。3層構造のソフトトップは、電動油圧システムによって30秒で優雅にリアデッキへ折りたたまれた。悦楽を追求したプライベートカーとして、浮世離れした雰囲気を漂わせた。

アズールは、裕福であることを周囲へ主張するコンバーチブルであり、自ら運転して愉しむベントレー。その点で、リアドアが備わらないブルックランズ・クーペも、同じ趣味にあったといえる。

殆どのオーナーは、実用性の高い高級車を他に複数台所有していたはず。ベントレーのマーケティング部門は、ターゲット層は平均14台のクルマを所有していると、割り出していた。

控えめな雰囲気のコンチネンタル R

今回ご登場いただいた、アンスラサイト・グレーに塗られたブルックランズ・クーペは2010年1月製。ラインオフした最後の1台に当たり、ベントレー・ヘリテージ・コレクションが管理している。

ヴィーナス・グレーで仕上げられたアズール・コンバーチブルも同様で、2008年に登場した「T」の2010年式。6761cc V8エンジンは、507psと101.8kg-mを発揮する。給油キャップは、削り出しのビレット。トリプルスポークの20インチ・ホイールを履く。

ベントレー・コンチネンタル R マリナー(1999〜2003年/英国仕様)
ベントレー・コンチネンタル R マリナー(1999〜2003年/英国仕様)    ジョン・ブラッドショー(John Bradshaw)

この2台に加えて、比較として1991年から2003年に提供された、コンチネンタル R クーペにもご登場願った。ホイールベース3016mmのシャシーに、426psを発揮する6750cc V8ターボエンジンを積む。

マリナー・エディションで、生産数は191台。これは、2003年に11台限定で投入された、ファイナルシリーズでもある。

キルティング・レザーに、ブラック仕上げのウッドトリムが特徴。1960年代以降、当時はベースを共有したロールス・ロイスと、異なるアイデンティティが狙われている。

ブルックランズ・クーペやアズール・コンバーチブルと並ぶと、シルバーのコンチネンタル R クーペはどこか控えめ。ケン・グリーンリー氏とジョン・ヘファーナン氏による、上品なスタイリングをまとう。

緩やかに弧を描くテールまわりは、その後ディルク・ファン・ブラッケル氏によって、次世代のベントレーへ受け継がれた。長く重いドアには、外側の大きなボタン式ドアハンドルと、内側のツイン・リリースが備わる。

この続きは、アズール・コンバーチブル ブルックランズ・クーペ(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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