【寒いのに? 寒いからこそ!】ノルウェーがぶっちぎりの世界一でEV化している理由

公開 : 2025.02.17 07:35

合理的な戦略と実行力

EVは電力で駆動し排気ガスが出ないため、環境に良いとされている。しかし、充電する際の発電にグリーンエネルギーが用いられていない場合、結局、二酸化炭素などが大気中に大量に排出されることになる。また、バッテリーのリサイクルなど、EV全体として考えた時に、必ずしも環境に優しいとは限らないという意見も聞かれる。

欧州連合(EU)は、2035年までにICEVの新車販売を全面的に禁止するとしていたが、条件をやや緩和し、環境に優しい合成燃料を使う車は認める意向。つまり、少なくとも近い将来は、必ずしもEVだけが最良の選択肢ではないという認識に改めた形だ。

EUは必ずしもEVだけが最良の選択肢ではないという認識に改めている(写真はイメージ)。
EUは必ずしもEVだけが最良の選択肢ではないという認識に改めている(写真はイメージ)。
    フォルクスワーゲン

しかしノルウェーの事情に限ってみると、潤沢なエネルギーや財源、環境、インフラ等々、知れば知るほどEV路線に突き進むことに合点がいくのだ。

ノルウェーは、合理的な戦略に基づき、政府主導で公金を大胆に投入してきた。そして動き出しも非常に早く、長期的に実行に移してきた。1990年に大きく政策が動き出したということは、それよりも前に綿密な計画を練っていたということになる。

一方で日本は、国土や自然環境についてはノルウェーとの共通点もありながら、エネルギー事情や人口規模はかなり異なる。また、日本の自動車メーカーの強みは、内燃機関(ICE)だ。伝統的にエンジンの性能が、日本車の国際的な競争力の源泉になってきたと言える。そういった点を鑑みると、ノルウェーのようなEV優遇政策や、大胆にEVに傾斜させた公金投入をすることは難しかったのだろう。

ノルウェーの事例を参考にはできても、そのまま日本で実行するのは現実的ではない。しかし、この実に合理的な戦略と実行力から学べることも、多いのではないだろうか。

記事に関わった人々

  • 執筆

    タクヤ・ナガタ

    Takuya Nagata

    スペインと日本で出没情報あり。小説、絵本、学術書といった幅広いジャンルで執筆。モビリティ、テクノロジー、社会開発、文化、フットボール等が主な研究テーマ。世界初のコンペティティブな混合フットボールPropulsive Football (PROBALL)、アートナレッジハブThe Minimalist、宇宙カルチャー&エンターテインメントThe Space-Timer 0を企画。単身渡欧し、英大学UCAの選手兼監督やスペインクラブのコーチを歴任。かつてブラジルCFZ do Rioに留学し、浦和レッズで欧州遠征。必殺技はイングランド式の『捨て身』のタックルで、ナガタックルと呼ばれる。ラグビーもプレー。

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