【重さ500kg増、出力14%増は是か】新型BMW M5はヘビー級チャンピオン?電動化時代『M』の落としどころ

公開 : 2025.02.19 11:45

新型BMW M5に公道初試乗。4.4LのV8ツインターボに電気モーターを組み合わせ合計727ps/1000Nmを誇る、BMW M初のハイブリッドモデルです。約500kgの重量増はどう影響するのでしょう?吉田拓生がレポートします。

英国編集部は『みなぎるトルク、驚異的に速く、明らかに重い』と評価

昨年、英国編集部による新型M5初試乗の記事はなかなか興味深かった。『みなぎるトルク、驚異的に速く、明らかに重い』。引っ掛かったのは最後の『重い』という部分だ。先代のM5と比べPHEV化された新型は実に500kgも(実際は440kg程度と思われるが)重くなっているというのだ。そしてリチャード・レーンはその重さについて『常に感取される』と書き記しているではないか!

ハイブリッドによる727psという動力性能は、過去の経験から想像できなくもない。だが車重が2.4トンもあるBMW 5シリーズと言われると?マークしか思い浮かばない。先代M5に大柄の大人5名がフル乗車しても追いつかないほどの重量増。ちなみに先代比で最高出力は14%(102ps)増でしかない。そんなセダンの走りに感動できるとは思えない。

BMW Mが初めて本格的に電動化システムを取り入れた新型M5。
BMW Mが初めて本格的に電動化システムを取り入れた新型M5。    山本佳吾

新型M5に乗れることが決まった時、思い浮かべたのは普通の5シリーズの最高峰という位置づけにある『i5 M60 xドライブ』だった。2モーターでAWDを形成するBEVで、システム最高出力は先代M5 に迫る601ps。というかいきなりパワーが全開放されるBEVの601psは、パワーバンドに入ってようやく発揮されるICEの625psより感覚的には断然速いのだ。

だからi5でブーストパドルを引きつつフル加速をしたとき、『これじゃM5の出る幕なんてないのでは?』と感じたのである。さあ、BMW Mが初めて本格的に電動化システムを取り入れた新型M5の仕上がりは、本当のところどうなのか?

炸裂するハイブリッド、i5を一蹴

カラーの名称は『フローズンディープグレー』だが、明るい昼間だと艶消し黒にしか見えない新型M5と箱根で合流。写真で見るより前後のフェンダーがワイドに膨らみ、表情もかなり険しい。ボクシングで言えばi5はミドル級、M5はヘビー級といった貫禄がある。

室内は最新BMWの意匠で、メーターパネルとセンターディスプレイが一体化しているあたりも含めて新型5シリーズのそれ。赤いボタンが主張するステアリングはM専用だが、それだってクルマ好きにしか通じないキーワードといえる。外観はいい具合であるのに対し、室内は少し残念といったところか。

室内は最新BMWの意匠で、基本的には新型5シリーズと同様。赤いボタンが主張するステアリングはM専用だ。
室内は最新BMWの意匠で、基本的には新型5シリーズと同様。赤いボタンが主張するステアリングはM専用だ。    山本佳吾

発進してからすぐにスロットルを強く踏み込むと、モーター走行による静寂が破壊されるようにして、すぐに4輪にパワーが漲る。加速の鋭さは車重を覆い隠すのに十分なもの。変速システムを持たないi5では一発のワープ感覚だけだったが、M5では変速の度に強烈なパンチが繰り出され、公道レベルのスピードをあっという間に飛び越えそうになる。

M5の加速はi5を確実に凌駕するものだったのだ。ではハンドリングはどうか? こちらはひしひしと常に感じる車重が影響しそうに思えた。どこが重いというのではなく、まんべんなく重いのだ。その一方でシートや操作系からタイヤのトレッドまでの一体感も凄い。生身の大人5人ではなく、5人分の重さの鉄骨がロールケージのようにボディを固めているような、そんな感じが伝わってくるのだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 撮影

    山本佳吾

    Keigo Yamamoto

    1975年大阪生まれ。阪神タイガースと鉄道とラリーが大好物。ちょっとだけ長い大学生活を経てフリーターに。日本初開催のWRC観戦をきっかけにカメラマンとなる。ここ数年はERCや欧州の国内選手権にまで手を出してしまい収拾がつかない模様。ラリー取材ついでの海外乗り鉄旅がもっぱらの楽しみ。格安航空券を見つけることが得意だが飛行機は苦手。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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