【新車で買える峠スペシャル】電動化目前!A110Rチュリニはガソリン世代究極のアルピーヌ

公開 : 2025.02.20 11:45  更新 : 2025.02.20 14:45

2026年でシリーズ生産終了が明言されている、アルピーヌA110。アルピーヌは電動化に熱心で、次々と新車が登場していきます。その中で、ガソリン世代究極のアルピーヌともいえる、『A110Rチュリニ』を吉田拓生が試乗しました。

電動化目前、軽量化こそ唯一無二のチューン

AUTOCAR JAPANの車種検索で『アルピーヌ』を選び、関連するニュースに目を通してもらえば、フランスのスポーツカー専門ブランドがいかに電動化に熱心なのかわかるはずだ。最新のニュースではアルピーヌは伝統的なA310のネーミングを復活させ、新開発のアルピーヌ専用のプラットフォームであるAPPを採用し、2+2のBEVを2028年に登場させるという。

そして残念なことに、アルピーヌのCEOであるフィリップ・クリーフ氏は2026年で現行モデルのA110シリーズの生産が終了すると明言している。A110の後継モデルはもちろんAPPを採用したBEVとなるようだ。

昨年夏にデビューした『アルピーヌA110Rチュリニ』。モンテカルロ・ラリーで有名な峠の名前を冠した。
昨年夏にデビューした『アルピーヌA110Rチュリニ』。モンテカルロ・ラリーで有名な峠の名前を冠した。    山本佳吾

BEV化される未来のアルピーヌに対する興味もなくはないが、それよりもガソリンエンジンをミドシップマウントする現行のA110に対する惜別の思いの方が大きいと言っておこう。初めてステアリングを握った瞬間から、この青くてミニマムな1台は特別な魅力を放っていたからだ。

今回試乗できたのは昨年の夏にデビューした『アルピーヌA110Rチュリニ』。モンテカルロ・ラリーで有名な峠の名前を冠したこのモデルは既出であるA110Rの派生モデルだが、A110Rに乗ったことがない筆者にとっては新鮮だ。その見た目で異彩を放っているのはカーボンファイバー製の黒い地肌をそのまま残したボンネットやルーフ、そしてリアフード、リアスポイラー等だろう。室内でもカーボン筐体の簡潔なバケットシートが目立つ。材料置換によって軽量化を徹底したA110ということになる。

高められたミドシップの純度

リクライニング不可のタイトなシートに収まり、標準装備されているサベルト製の6点式レーシングハーネスを締め込むだけで笑みがこぼれる。それは現代の新車というよりマニアがいじったチューニングカー、もしくは本物のラリーカーのようなのである。

スターターボタンを越し込むと迫力のサウンドに包まれるが、これはアクラポヴィッチ製のエキゾーストシステムによるもので、1.8LターボエンジンのスペックはA110Sと同じ300ps版となる。『アクラポ』は音やパワー特性だけでなく重量削減に寄与している他、18インチの『GTレース』ホイールでも1本につき1kg軽量化されているという。

リクライニング不可のタイトなシートは、サベルト製6点式レーシングハーネスが標準。
リクライニング不可のタイトなシートは、サベルト製6点式レーシングハーネスが標準。    山本佳吾

走り出すとすぐにはっきりとした『軽さ』を実感できる。軽量化の総量はざっと20kg程度と思われるが、ただでさえ体脂肪が少ないアスリートのような1台なので、絞り込みは大変だったはず。しかもマフラーやボンネット、ルーフなど車体中心から遠い場所の軽量化であることがミドシップの純度を高め、体感性能の引き上げに効いているのだと思う。

一方、アルピーヌA110といえばフワッとしたやさしいハンドリング、クルマの動きに定評があるが、その部分はA110Rチュリニではほとんどカットされていた。セミレーシングとも言うべきミシュランのパイロットスポーツカップ2の強大なグリップと、相応にアップレートされたバネとスタビによるものなのだが、これが車体とも完璧にマッチングしており運動性能を別の次元に押し上げている。チュリニは『新車で買える究極の峠スペシャル!』と断言していいだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 撮影

    山本佳吾

    Keigo Yamamoto

    1975年大阪生まれ。阪神タイガースと鉄道とラリーが大好物。ちょっとだけ長い大学生活を経てフリーターに。日本初開催のWRC観戦をきっかけにカメラマンとなる。ここ数年はERCや欧州の国内選手権にまで手を出してしまい収拾がつかない模様。ラリー取材ついでの海外乗り鉄旅がもっぱらの楽しみ。格安航空券を見つけることが得意だが飛行機は苦手。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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