【大化けするかも?】横浜『グリーン・マルチモビリティハブステーション』は単なるEVや電動キックボード交通結節点にあらず

公開 : 2025.02.21 11:05

『絵にかいた餅』で終わらせないために

そうした『ヨコハマに来てもらうため』の情報発信から今回、『ヨコハマに来てもらった時の移動』を提供するシステムへと活動の場を広げようとした。そこに、横浜に本社がある日産自動車、さらに大成建設やJTBなどが『公共空間の質的転換を通じて社会課題解決に貢献する』ことを目指した、一般社団法人パークライン推進協議会が加わった形だ。

要するに、地域社会と日常的に付き合いのある『クルマのプロ』が、そのネットワークをフル活用して『さらなる人の輪』を作っているのだ。すでに成果があり、横浜中華街の春節祭でのデジタルスタンプラリーとの連携は利用者の評判がとても良い。グリーン・マルチモビリティハブステーションは、単なる交通結節点ではなく、『地域社会同士の人の輪』を作り出すためのキッカケになっている。

トヨタ『bZ4X』、『C'pod』、日産『リーフ』、『サクラ』などの電動車がカーシェアできる。
トヨタbZ4X』、『C'pod』、日産『リーフ』、『サクラ』などの電動車がカーシェアできる。    桃田健史

『モビリティ×地域社会』という文脈では2010年代半ば以降、全国各地で、EV、自動運転、AIオンデマンド交通、ライドシェアなど、様々な実証実験が行われてきた。しかし、その多くが『実証のための実証』として、国や地方自治体からの事業支援が終わるタイミングで姿を消していく現実を、筆者はこれまで全国各地で数多く見てきた。

こうした過去の失敗の主な理由は、実証事業に係る人たちの、データに基づく現状把握と未来予測に対する認識の甘さがあげられる。また、地域社会を本気で変えていこうという、地域のリーダー役(個人や地元企業)による『粘り強い交渉力』の欠如もある。

筆者自身、昭和の時代から横浜育ちであり、令和の時代にいたるまでの横浜の町の変化を見てきた。その上で、横浜がいま抱えている社会課題についても肌感覚で分かる。だからこそ、『グリーン・マルチモビリティハブステーション』を支える人たちに、横浜の未来を切り開く可能性を感じる。

同プロジェクトは、2024年12月21日から2025年3月23日までの実証であるが、関係者によれば来年度以降は、他の場所にもステーションを設けるなどして社会実装を目指すという。その動向は、全国各地から注目され続けることだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

関連テーマ

コメント

おすすめ記事

 
×