マツダ2、英国での販売終了 排ガス規制に対応 トヨタのOEM車へバトンタッチ

公開 : 2025.02.17 18:05

マツダは英国向けの「2」の販売を終了した。現在、在庫のみの対応となる。現地のZEV規制に対応するため、トヨタからOEM供給されたヤリスを「2ハイブリッド」として販売し、排出量削減を目指す。

約10年の販売に幕

マツダ2が英国で販売終了となった。トヨタヤリスのOEM車であるマツダ2ハイブリッドが事実上の後継車となる。

英国では現在、新車として注文することができず、マツダの広報担当者はAUTOCARに対し、全国のショールームには「数百台」の在庫しか残っていないことを認めた。

英国ではマツダ2ハイブリッド(画像中央)のみがラインナップに残る。
英国ではマツダ2ハイブリッド(画像中央)のみがラインナップに残る。

これにより、約10年にわたる販売に幕が下ろされる。2015年4月に英国に上陸した現行世代のマツダ2は、小気味よい走りとスマートな車内空間で、高い評価を得た。2019年と2023年にそれぞれ一部改良を受け、そのたびに最新技術が追加された。

今回の廃止の理由について詳しい説明はないが、広報担当者はAUTOCARに次のように語っている。

「電動化を進める中、マツダ2ハイブリッド(注釈:トヨタ・ヤリスがベース)はBセグメントにおける消費者ニーズに応えるものであり、2030年までにすべてのクルマを何らかの形で電動化するという当社の取り組みの一歩である」

しかし、マツダ2はすでにマイルドハイブリッド・パワートレインが搭載されていたため、販売終了は別の要因によるものかもしれない。

英国のゼロ・エミッション車(ZEV)規制が廃止を後押しした可能性がある。この規制では、自動車メーカーは2030年までにEV販売比率を徐々に80%に引き上げ、2035年までに100%にすることを義務付けられている。

現行の法律では、英国で新車を販売する各メーカーには毎年、カーボン「クレジット」枠が割り当てられる。これは、前年度の総販売台数と、2021年に販売したガソリン車、ディーゼル車、ハイブリッド車の平均CO2排出量に基づいて算出される。

メーカーが総排出量をこの枠内に抑えた場合、余剰のカーボンクレジットを事実上の販売台数に換算し、ZEV販売にカウントすることができる。この交換は、ZEV「販売」1台につき167のカーボンクレジットというレートで行われる。

簡単に言えば、年間に販売するガソリン車、ディーゼル車、ハイブリッド車の総CO2排出量を167g/km削減するごとに、ZEV目標を達成するために必要なEV販売台数が1台少なくなるということだ。

AUTOCARの調べによると、マツダは昨年、英国でガソリン車とマイルドハイブリッド車の2を合わせて約4400台販売しており、その内訳はガソリン車が約1700台、マイルドハイブリッド車が約2700台となっている。

ガソリン車のCO2排出量は109g/km、マイルドハイブリッド車の排出量は107g/kmである。このため、昨年の総排出量は約47万4000g/kmとなる。

もし、この4400台がマツダ2ハイブリッドであった場合、排出量は87g/kmと大幅に低いため、約9万gのCO2を削減できたことになる。

これにより、マツダは罰金を回避しながら、EV以外のクルマを約500台(昨年の販売台数の2%)多く販売することができたはずだ。

これはマツダにとって重要なことで、英国では来年新型6eが発売されるまで、ゼロ・エミッション車は1車種(MX-30)のみとなる。

AUTOCARが知る限り、2024年の英国における総販売台数の約5%がバッテリーEVのMX-30であると考えられるが、これは同年のZEV規制の目標値であった22%には遠く及ばない。

なお、英国運輸省によると、昨年ZEV規制に違反したとして罰金を科された企業はない。

しかし、今年以降は目標値が大幅に引き上げられる予定であるため、メーカーはさらに大きなプレッシャーにさらされており、小さな改善を積み重ねることが絶対的に不可欠である。

マツダ2のような、売れ筋の(かつ比較的CO2排出量が多い)非ハイブリッドのコンパクトカーが、排出ガス削減とEVシフトをめざす競争で最初の犠牲者となる可能性が高いだろう。メーカーは、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車の販売台数を増やして排出量を削減し、伸び悩むEV販売の成長を補うために追加クレジットを確保しようとするかもしれない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・マーティン

    Charlie Martin

    英国編集部ビジネス担当記者。英ウィンチェスター大学で歴史を学び、20世紀の欧州におけるモビリティを専門に研究していた。2022年にAUTOCARに参加。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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