【第5回】サイトウサトシのタイヤノハナシ~速度記号の歴史についてひも解いてみました~

公開 : 2025.02.19 17:05

タイヤが大好物のサイトウサトシが、30年以上蓄積した知識やエピソードを惜しみなく披露するこのブログ。第5回は、タイヤの速度記号。その誕生から、クルマの性能向上に伴い区分が増え続けてきた歴史を振り返ります。

Sからはじまった速度記号

タイヤのサイズ表記の一番後ろに書いてあるアルファベットの『アレ』。225/45R18 95WのWです。知っている人も多いと思いますが、アルファベットは速度を表しています。ちなみにWという速度レンジは270km/hが最高速になっています。

現在のスピードシンボル(速度記号)の表を載せておきます。これはISO(国産標準化機構)で2015年に規定されたものです。

ラジアルタイヤをはじめて開発したのはミシュラン。扁平率の後ろにあるアルファベットは構造記号と呼ばれ、Rはラジアルタイヤであることを示す(写真はBMW M4CS)。
ラジアルタイヤをはじめて開発したのはミシュラン。扁平率の後ろにあるアルファベットは構造記号と呼ばれ、Rはラジアルタイヤであることを示す(写真はBMW M4CS)。    斎藤 聡

速度記号 最高速度(km/h)
J100
K110
L120
M130
N140
P150
Q160
R170
S180
T190
U200
H210
V240
W270
Y300
ZR240以上
(Y)300以上

ほぼアルファベットの順番通りに並んでいるのですが、この表を見るとOがなく、HとZ(ZR)の順番がおかしくなっています。

スピードシンボルの歴史はほぼラジアルタイヤの歴史と一致します。と言ってもだいぶタイムラグがあるのですが……。

ラジアルタイヤを世界で最初に開発したのはミシュランです。1946年にラジアル構造を開発して特許を取得。最初のモデルはミシュランXと名付けられてシトロエンの2CVに採用されました。1950年代、ミシュランは欧州の主要メーカーと提携してラジアルタイヤを普及させていきます。

ラジアルタイヤの高性能化に大きく貢献したのはピレリで、1954年にチントゥラート(ベルト)構造を発表。今やラジアルタイヤに当たり前の構造となっているスチールベルトを採用したのがピレリだったのです。これによってラジアルタイヤは一気に高性能化していきます。

クルマの高速化も加速度的に進んでいきます。この頃は、一般的な乗用車の最高速度は180km/h程度で、これに対応したタイヤのスピードシンボルとしてSが割り当てられ、165SR14などと表記されていました。これを超える高速走行が可能なタイヤのスピードシンボルとしてHが使われ、同様に185HR15といった具合に表記されていました。もちろんSのつかないタイヤもたくさんあり、スピードシンボルのない155R13などと表記されていました。

1960年当時、まだスピードシンボルには厳密な規定がなく、統一もされていませんでした。ただ、各メーカーともSがSpeed、HがHighやHigh Speedを、直感的に高性能をイメージするアルファベットとして採用し、これが慣例化されていったようです。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    斎藤 聡

    1961年生まれ。学生時代に自動車雑誌アルバイト漬けの毎日を過ごしたのち、自動車雑誌編集部を経てモータージャーナリストとして独立。クルマを操ることの面白さを知り、以来研鑽の日々。守備範囲はEVから1000馬力オバーのチューニングカーまで。クルマを走らせるうちにタイヤの重要性を痛感。積極的にタイヤの試乗を行っている。その一方、某メーカー系ドライビングスクールインストラクターとしての経験は都合30年ほど。

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